NEWS 事務局からのお知らせ

コロナ病棟のアート企画実施WS 最終報告会(第7回,1/17)開催

「コロナ病棟の患者さんやスタッフの皆さんにアートを届けよう」
最終報告会&第7回WS 2022年1月17日(月)19~21時 オンライン開催


「ワークショップ全体のアートマネジメント視点での振り返り」


・これまでのWS全体の振り返り
・贈呈したアートについて(運営メンバー+WS参加者)
・コロナ病棟の現状や実施アートへの村井医師からのお話
・アートマネジメント視点での振り返り
・質疑応答
・講師やファシリテーターの振り返りコメント
・鈴木先生よりまとめ


コロナ病棟にアートを届ける企画ワークショップの最終回は、これまでの参加者に加え、この回のみの聴講参加者の方にもご参加いただいて開催しました。

これまでのワークショップの内容は下記から確認いただけます。
第1回 ガイダンス、医療者・建築家からの説明 (7/26)
第2回 アート事例の紹介とアイデア出し(8/9)
第3回 グループでアートの企画検討(8/23)
第4回 グループでアートの企画検討(9/6)
第5回 病院へのアンケート結果の共有と実施アートの発表(9/27)
第6回 コロナ病棟 現場見学の報告とアートの詳細検討(10/11)
企画実施WS「コロナ病棟の患者さん&スタッフの皆さんにアートを届けよう!」について


これまでのワークショップ全体の振り返り


はじめに事務局からこのワークショップの概要やこれまでの流れをスライドに沿って説明しました。





このワークショップは、全国から参加いただいた多様な年代・職種の方とともに、地域の文化施設や企業の協力も得ながら、コロナ病棟にアートを提供するワークショップで、これまで第1回から6回までオンラインで開催しました。




上のスライドからも分かるように、アート提案のタイミングがコロナ病棟の最も多忙な時期に重なったこともあり、直接お会いして提案することはできず、紙に提案内容をまとめ、アンケートに回答いただくかたちで、医療スタッフの方の声を聞くことになりました。

その後、病棟がやや落ち着いてきたのを機に現場見学と看護師さんへのヒアリングの機会を設けました(10/8)。その後1か月半ぐらいかけてアートのつくりこみをし、11/25に贈呈をしました。
贈呈のタイミングでNHKや地元テレビ局から取材を受け、放映されました。右の動画がメ~テレさんの放映動画です。



贈呈したアートについて


東部医療センターのコロナ病棟に贈呈したアートについて、メ~テレさんの放映動画を見た上で、運営メンバーおよびワークショップ一般参加者から補足説明やコメントをいただきました。


○デジタルアート


吉岡さん「僕が実装に関わったものは大きく分けて2つあり、その1つが篠原さんグループが作成された紙コップのQRコード先にある動画です。動物の写真と名前、メッセージが見られ、再生ボタンを押すと音楽が流れます。」



吉岡さん「もうひとつが病棟内の廊下、グリーンゾーンに設置したデジタルアートで、最初に下記の①~③のコンテンツを実装し、その後④~⑥を加え、計6種類あります。」


最初に実装したコンテンツ
①イワシ(音に反応して群れが散るインタラクティブなコンテンツ) 
②自然の風景と動物イラスト、メッセージのコンテンツ(高野さんグループの企画) 
③村井先生撮影の風景写真
途中で加えたコンテンツ
④モニョモニョと不規則に動く映像 
⑤イチョウ 
⑥スタッフフォト(自分たちで入れ替え可能)」

左側:放映される映像 右側:操作画面


吉岡さん「現場からの課題としては『飽き』があり、コンテンツを増やしたり、ゆったりした動きのデジタルアートを追加することで対応しました。そしてそもそも医療現場にどのようなデジタルアートが良いのか検討していく必要があると感じました。ワークショップでの振り返りとしては、チーム内でデジタルアートでできることの共有が不足していたように感じました。デジタルアートはアップデートが容易なため、それを前提として実装後にレビューをいただき、それを反映したアップデートを行う環境を整えていきたいです。」


○デジタルチーム参加者の感想
三ツ川さん「アイデア出しから実装まで関わることができました。オンラインの難しさもありましたが、今回の経験が自分の活動にも活かせると思いました。」

川西さん「インタラクティブなデジタルアートはコロナの状況ですごく効果を発揮できるのではないかと興味津々で参加しました。デジタルのスキルを持った方がもう少しおられた方が進みやすかったかもしれないですが、デジタルアートという立体や平面と違い、物質性を背負っていないものが、人の心理にどう作用するか考えることが面白く、楽しかったです。」

谷口さん「実際に現場に行き看護師さんたちの反応を間近で見ることなど良い経験ができました。徐々に詰めていくことの難しさを感じて、アート導入の進め方の勉強になりました。」


○自然をテーマとした高野さんグループ


高野さん「自然を病室に届けられたらと、「森からの贈り物」をテーマにそれぞれが考えたことを一つの案にまとめました。それぞれ素晴らしい案でしたが、一つにまとめた結果分かりづらいプランになってしまったのが反省点です。残念ながら採用されませんでしたが、医療者の方から貴重なフィードバックを得られました。そして、デジタルアートへの展開が下のコンテンツです。合わせて動物たちの木のオブジェもつくりました。」


会話している動物のイラストと風景の組合せ


壁側に木のオブジェ。裏面のマグネットで移動が可能


○病室へのグッズ提案をした篠原さんグループ


篠原さん「病室で患者さんに使っていただけるモノを提案しました。チームの皆さんが得意なことを活かして進められ、企画書も役割分担して作りました。
右の画像は、村井先生の写真を含む自然の景色をトイレパーテーションに貼ったもので、色々議論して10枚を選んで実施しました。印刷は壁紙メーカーのサンゲツさんにご協力いただきました。」





篠原さん「左は紙コップ、右はティッシュボックスで、東山動植物園のご協力で写真提供をいただきました。吉岡さんの協力も得て、紙コップに記載したQRコードからは動物たちからのメッセージが見られます。」

○篠原さんグループ参加者の感想
岡田さん「普段のデザイン業務とは全然違い、最初は戸惑いましたが、回を追うごとにアートの方向性が明確になり、良いチームワークで進んだと思っています。遠隔でのグループワークは初めてで、難しい点もありましたが、無事にアートを病院に納めることができ、安堵しています。」

長倉さん「とにかく医療従事者の方の負担にならないことを第一に、何をすれば喜んでいただけるかを考えていった気がします。そして狭い病室の中だけで過ごす患者さんの閉塞感を緩和できるよう考えました。できることを分担しつつ、進捗や議事録、タスクを皆で共有できたのが良かったと思います。」

小島さん「目的がブレなかったのが上手くいった要因だったと思います。コロナ禍で改めて地域医療が大事だと実感していて、患者さんが少しでも地元に愛着や心地よさを感じて社会復帰されるよう願っています。」

松村さん「仕事で医療施設の空間デザインの仕事に携わっていて、社会貢献のために参加しました。現場に納めた瞬間を拝見でき、自然をモチーフにしたパーテーションや紙コップでこんなに癒やしの病室になるんだと実感しました。」


コロナ病棟の現状や実施アートへの村井先生からのお話


村井先生「先の動画で導入前の病室を思い出して、やはりアートを導入いただいてよかったと思います。ただ、変化を知らない患者さんにとってはあるのがあたり前で反応が少ないのも事実で、写真などプロによるものは提供側の顔が見えにくい側面もあるかもしれません。
今回は病棟が忙しいときに作品を決定、さらに紙の提案書から判断しないといけない状況で、どうしても分かりやすい、訴求力のあるものが選ばれました。次回また色々工夫したプレゼンテーションを期待しています。
一方、アート導入時やそれ以降の入院患者は少なく、現状も1〜2名と非常に落ち着いた状況です。でも今後おそらく2月にピークが来ると予想しています。」

アートマネジメント視点での振り返り


感染症対策・スタッフの負担軽減・変化し続ける状況・現場との接触の難しさ
ヘルスケアアート全般における重要な視点と今回の対応策




次に、今回のコロナ病棟における特異な条件をスライドで確認しながら、アートマネジメントの視点でふり返りました。

篠原さん「以前ランチョンマットを提供した際に、どういう条件ならスタッフも受け入れられるのかを把握していましたし、病室への展開をはっきりと意識して、感染症対策を皆がよく理解していたため、使い捨てできる紙コップ等の展開となりました。」

村井先生「看護師のメンタリティーとして、普段はポジティブに受け止められるものでも、忙しい時には難しい状況があり、特にゴミが増えることや病室内が不潔になることに抵抗感が強く、創作系のように一歩踏み込んだ提案が受け入れられづらい状況でした。」

高野さん「今回、現場見学の機会も限られ、提案側は使っていただく場面を想像するのが難しかったですし、看護師さんにとっては突然アンケートが来てそこから選ぶ形となり、完全に受け身になってしまい、主体的に参加できない状況だったかと思います。」

吉岡さん「現場とのコミュニケーションで難しかった点が目につくものの、コロナがあったからこそ、離れた状況でもできることを検討できたり、遠隔でのコミュニケーションの課題が見えたり、トライできたと思います。」

事務局「普段の鈴木研での提案では1〜2案を施設側に提示して調整するのですが、今回はやや多めの提案の中から選んでもらうことで現場とのすり合わせができればと考えていました。ただ提案方法が紙のみの限定的なやり取りになり、わかりやすさや実用性がより訴求力を持ったように感じました。」

篠原さん「実は篠原グループはキャッチフレーズや全体メッセージなどプレゼンに力を入れていました。それが結果的に高評価につながったのでは。」


デジタルアートの利点と課題、今後の展開


吉岡さん「複数人での共同作業に関して、将来的にデジタルアートの事例がいくつか集まればさらにディスカッションがしやすくなると思います。」

事務局「今回、一度実装した後に修正してアップデートして内容を増やしてもらったり変更してもらったり現場でしてもらうという対応もしてもらいやすくてありがたいと感じました。」

吉岡さん「今回はブラウザへの実装ではありませんでしたが、wifiルーターを置き遠隔でも保守できる環境を整えました。今後ブラウザ実装をすることで、初期費用を抑えつつ、興味をもった施設に試してもらえるといいなと思います。」

事務局「導入してみて分かる課題やアイデアなどを聞くことで加速的に開発が進みそうですね。今回、そういったデジタルの利点を感じる一方で、飽きや疲れといった傾向も感じ、デジタルではないアートの魅力や可能性も改めて感じる機会にもなりました。」

吉岡さん「どっちが良いどっちが悪いという結論ではなく、それぞれ得意なことをやれるといいですね。壁画にデジタルアートをプラスするような展開もいいですね。季節で変わる部分だけデジタルでやるなど。」

質疑応答


Q. 制作系のアートは難しかったとのことでしたが、臨床美術の観点からすると自己存在意義が高まり、回復力向上につながると思います。コロナの現場では作業療法、芸術療法的への需要はどうだったのでしょうか。

谷口さん「当初は回復期があり、若い方は何日か退屈していると聞いて、何かつくって記念品にというアイデアもあったのですが、入院日数の減少に加え、感染状況が悪化する中でチームでも腰が引けてしまう状況があり、結果的に参加型の企画に絞られました。」

村井先生「やはり紙ゴミが増えるし、事業ゴミとして処分するコストもかかります。患者さんの持ち込み荷物が多く、持ち帰れず置いていくこともあり、処分が必要なモノに対して看護師が拒否する面がありました。」


講師やファシリテーターの振り返りコメント


高野さん「現場を想像してアートを制作しますが、実際の反応は設置後にしか分からないし、別の使い方に発展することもあるので、継続的な関わりや常に変化を加えられる環境が整うと良いなと思いました。」

吉岡さん「離れた場所でコミュニケーションを取りながら一緒に作って届けるということに、挑戦できました。苦悩した部分もありましたが、実際にでき、意見ももらえた。こうしたことをなるべく広く試して色々な意見を吸収し、実装できる仕組みを作れればと思います。
病院でデジタルアートをする活動を6年ほど前から行い、ケアやリハビリテーションにどう役立ててどう評価するかの研究を進めていますが、今回フラットな気持ちで病院にデジタルアートを置くことについて話ができる仲間ができたのがすごく大きいです。」

篠原さん「松村さんから、真っ白な病室にアートが入って感動したと話があった後に、村井先生からずっと見ていると日常になってしまう、という意見がありました。他の施設のヘルスケアアートでも似た話を聞きます。だからデジタルアートのように、状況によって変えられるアートや環境の提供が必要だと思っています。一方で全くないよりはやはり気持ちが和らいでいるのは間違いないと思っていて、その組み合わせが大事なのだと思います。」

村井先生「本館に高野さんが主導して皆で描いた壁画があり、塗りムラもあるのですが、スタッフが塗ったことが感じられて愛着があります。患者さんには分からないことですが、僕らにはアートを導入してくれた人や、楽しかったことを思い出します。だから参加型のものができるといいなと思っていました。」


鈴木先生によるまとめ


鈴木先生「今回は、まっさらなところからスタートし、大きな一歩を踏み出せたかなと感じています。
コロナが出てきた時に、ドイツのメルケルさんがアートは不可欠であるとメッセージを出したことなどに、すごく感動をしました。
篠原さんからコロナ病棟を設計する際にアートを入れられる素地がなかったという話があり、そこに少しでも切り込めたでしょうか。
当初は提案までかとも思っていましたが、実装までできました。これは村井先生の全面的なご協力のほか、設計を担当した篠原さんが身近にいて、本病棟に高野さんがアートやったという下地もあり、吉岡さんというデジタルアートに強い方を仲間にして一緒にやれたという、この組み合わせはスペシャルだったと感じます。参加者のみなさんも含め、色んな専門性を持った方が重なり、役割分担されて非常に上手く進んだと思います。そして、もう少し患者さんの声が聞ける場面ができるともう一歩進められるのかなという気がしました。」


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