事務局からのお知らせ

事務局からの連絡事項、活動報告など

実践WSとして進めている名古屋市厚生院さんでのアートイベントでは、コンテンポラリーダンスという目玉企画があります。受講者の小野さんリードで同じく受講者の永山さんとチームを組んで企画を進めていただき、この日はダンサーさんを名古屋にお呼びしての事前打ち合わせがありました。運営側からは事務局の伊藤さんと寺井が参加。

小野さんは当初から池端美紀さんという関西の女性ダンサーさんを候補にされていました。今回の企画にしなやかに対応してもらえると。小野さんが今回のダンスに求めるのは「誰が見ても美しい踊り(動き)・衣装(ビジュアル)・音楽(サウンド)」ということで、池端さんからもともと美術が好きであることを聞いたり、衣装を手作りしたり衣装から踊りをイメージしたりするという話を聞いたりすると納得で、期待が高まるのでした。

池端さんには、ヘルスケアアートマネジメント事業の概要を説明し、今回の厚生院でのアートWSに至った経緯や、ダンス企画の大枠をお伝えしました。それからイベント当日の具体的な点を確認していきます。
(事前に何度か小野さんから企画が伝えられ、すでにアイディアを練った状態でお会いすることができました)

●衣装は?
・会場には桃の木や菜の花を使った装花が用意がされることから、ピンクと黄色との調和や和のイメージをもとに考えてくださる。
・今のところはっきりしたピンク色の風合いのある生地を使ってワンピースを自作して、手持ちの帯を締めるというアイディアで進めてくださっているそう。聞いているだけでなんだかカッコいい。
・受講者でフラワーアーティストの山崎さんから、生花を用いたヘッドドレスも作れると聞いていることを伝えると、ぜひ使いたいとのこと。桃の木を手に持ちながら踊るアイディアも。会場装飾の生花とコラボしたダンス企画になりそう。

●ダンスの内容、振付は?
・「ボレロ」「ミニマム」「繰り返し」「音とあえてそろえない」「脳が開放感を得られる」「リラックス」「鑑賞者が予測できる動き」――などなどの言葉が話され、小野さんいわく「こうした話ができるのがアート企画の醍醐味!」とのこと。ところがダンスに馴染みがないとイメージできないのも正直な感想。ぜひ、お任せしたいですとお願い。

●テーマは?
・春、始まり、といったキーワードから、ダンスを考えてくださることに。

●各回45分間の流れは?
・厚生院の特養の各フロアごとに、45分間を目安に入所者さんとスタッフさんが会場を訪れてくださる予定。しかし決まった時間に全員がそろうということはなく、実際には介助スタッフさんのタイミングであったり、入所者さんの状態を見計らったりして訪れる。このためダンス公演は5分と短時間にし、振付をした同じ内容を45分間に2回公演する。
・午前に2フロア(それぞれ45分間)、午後に2フロア(それぞれ45分間)のタイミングがあり、ダンス公演は計8回。
・会場ではボランティアさんからの呈茶があり、ダンス公演と呈茶のタイミングを重ねない方がよいと判断。そこで45分間を以下のように整理。
  10分 呈茶、お茶菓子を楽しむ
  5分 ダンス公演
  5分 ダンス公演の余韻(ダンサーさんとの交流など)
  5分 間をおく
  10分 呈茶、お茶菓子を楽しむ
  5分 ダンス公演
  5分 ダンス公演の余韻(ダンサーさんとの交流など)

●音楽は?
・「誰が見ても美しい」のコンセプトに適した、「誰が聞いても美しい音」を小野さんが用意していて、優しく切ないようで美しいメロディーの音楽たちだった。ダンス5分間はこれらの方向でいく。
・ダンス公演では優しく美しい音楽を用い、その前後の時間はあえて区別をつけるために雰囲気の異なる音楽を流してダンスを引き立てようと考えた。そこで前後の時間にはいわゆる「ひな祭り」な音楽CDを探してかける方向でいく。

●機材(スピーカー)は?
・音がならないと致命的。今は音源がCDだったり、iphoneだったり、PCから焼いたCDだったりと、意外と接続方法などをしっかりチェックしないといけない!
・厚生院さんの講堂に備えられている音響設備が使えればベスト。保険的に手持ちのスピーカーも持参することに。


ダンサーさんが衣装のワンピースに考えているピンクの生地。


この日は個別に企画を持ち寄り、発表&検討をしました。参加者は受講生8名、見学者1名、鈴木教授(講師)、高野さん(ファシリテーター)、事務局2名。
はじめに今回のWSに参加した理由や、連続講座でヘルスケアアートを学んで感じたことなどを含めた自己紹介をお願いしました。そうした背景から企画が出てきていることや、厚生院WSで目指すところの目線合わせになればと思ったためです。一通り自己紹介や思いを聞くだけでそこそこの時間を使いましたが、結果皆さんがさまざまな専門分野にいながらヘルスケアアートを学ぼうと思った経緯などを詳しく知れ、大事なプロセスだったかと思います。

なお参加者の職業としては、インテリアコーディネーター 、デザイン関係者、フラワーセラピスト、アロマセラピスト、アーティスト、医療ソーシャルワーカー、 看護師、作業療法士といったもので、どなたもどこかで医療福祉と関わることがあって、「恩返ししたい」「役に立ちたい」といった声を発していたのが印象的でした。


早速、持ち寄った企画の発表をしてもらいました。「春」「ひな祭り」「高齢者」といったテーマに沿うもので、場所は医療福祉センター名古屋市厚生院の講堂もしくは特別養護老人ホームの生活スペース等となります。
※ここまでのいきさつはレポート「第1回見学会」で詳しく知れます

デザイン関係者の方からは春やひな祭りに関する装飾の案が、フラワーセラピストやアロマセラピストの方からは生花や香りを使った案が、アーティストの方からはダンスや絵画鑑賞、医療関係者の方からは折り紙でひな人形を折るなどするメッセージカードや保育園児との交流といった案が出てきました。企画はホワイトボードにまとまっています。(画像参照)

ホワイトボードの記号の見方
・赤の[ ]→ 装飾系の提案
・黒の★→ ツール系の提案
・お花マーク→ 生花を利用する提案
・(香)マーク→ 生花もしくはアロマの香りを利用する提案
・(常設)マーク→ 施設に常設で施工する提案
・太い下線2本→ ダンスと絵画鑑賞というそれぞれ別軸の提案

いずれも内容や予算的には実現可能でしたが、時間やマンパワーの面から重複する案をまとめたり、厚生院さんに選んでもらったりしましょう、という話をしました。選べなかった案も、例えば来年や、別の施設等の機会にぜひ実現してみたいものです!
このような流れから、提案は4つにまとめました。

提案する企画は4つにまとまりました

1)あんどん・ぼんぼりの装飾

照明を組み込んだあんどんやぼんぼりを制作し、ひな祭りイベント時に飾りとして利用。その後もしばらくは、特養のフロアに設置してもらうなど活用してもらえる企画です。また厚生院の備品にしてもらえれば、来年以降も春に飾ってもらえる可能性があります。部品をそろえたら手作業で組み立てることになるので、受講生の皆さんで制作ワークショップをやりましょう! と話しました。
あんどんは床に設置(1mほどの高さ、蛍光灯を使う)、ぼんぼりは壁に設置(筒型またはちょうちん型、照明の方法は検討中)といったように設置方法などが違うので、どちらがよいか厚生院さんに選んでもらうことになりました。
<今後の検討事項>
・ぼんぼりは形や照明や壁掛け方法を要検討、あんどんの設置場所も確認
・和紙風の紙に印刷する花柄などのデザイン案
・見積もりと数量 など

2)コンテンポラリーダンスショー

認知症の方や介護度合いの高い方に向けては、見るだけでも楽しめるアートが有用だという意見が出ていました。スタッフを含めたすべての方に見てもらい、心身がいきいきとする楽しみや感動を届けたいといったコンセプトで、ダンスプログラムを提案することにしました。
ミラーニューロンという「他者の行動を見ているだけで、他者の行動と同等の脳内の活動が行われている」という人の共感に関わる脳のネットワークシステムがあるそうです(小野さん資料から)。感覚・感性に訴える、抽象度、身体性の高いコンテンポラリーダンスを若い女性に踊ってもらう案ですが、絵画や彫刻などの展示物と違い、ダンスとなると医療施設でなくとも普段から見られるものではありません。その点で外部からアート提案をする機会にはうってつけの内容と感じます。ダンスが分かるマネジメント人材がいなければ実現できないことだと思いました。
<今後の検討事項>
・公演の回数や時間、依頼料
・ダンスの衣装や内容、ステージとなる場所や設備 など

3)香りの体験

さまざまな五感を使って春を感じてほしいという思いから、フラワーセラピストの方やアロマセラピストの方から「香り」の提案がありました。具体的には(1)「食べても大丈夫!」というオーガニックローズ(食用バラ)を小部屋に閉じ込め、ドアを開けて中に入ってみると一気にバラの香りに満たされるというわくわく体験、(2)レモングラスの香りが前頭葉の血流量を増やすことで脳の活性化につながり認知症の改善に役立つという可能性があることから、今回のイベント空間内をレモングラスの精油で芳香する、などの案が出ました。
生花や精油の使用は、まず厚生院さんからどう受け止められるかの反応が気になるところですが、バラもレモングラスもリラックス効果、免疫力を上げる、集中力を高めるなどの効果が期待される理由とともに提案することになりました。
<検討事項>
・香りの強さや時間など

4)ひな祭り会の案内カード


ひな祭り会には参加される方とされない方がいるようだったので、参加される方には「参加のお誘い」という内容で、参加できない方には「メッセージカード」という内容で制作するプランでした。ひな人形を折り紙で折って貼った見本は、和柄でとてもかわいい。ここに職員や家族の方に手書きメッセージを依頼し、書いてもらうことで参加してもらうという案も。入所者の方には一人一人手渡しで。300床あるためカード作りはやや大変!? 「やり方次第で時間短縮できると思います!」と坂本さん。
<検討事項>
・どこまで手作りするか?
・メッセージの記入は可能か? など

効果測定の議論もありました

企画書フォーマットに「効果測定の方法」という項目を入れていました。前回、「念頭にはおきたいが難しいことも多い」という話がありつつも、皆さん効果測定について考えてきてくださいました。厚生院の場合、入所者の方ご自身がアンケートに記入したり質問に答えたりすることが難しいと想定されるので、スタッフ・家族向けのアンケートや聞き取り調査が現実的ではあります。その上で、可能性についても話し合いました。

残飯量が減る!?

香りの提案において。「ストレスが緩和されると食欲が増す傾向が見られ、イベント前日と当日の夕食の残飯量を計測する」という提案がありました。もし本当にアート導入で残飯量が減るのであれば画期的ですね! これはアート導入で入院期間が短くなり医療費の削減につながったという英国の事例と同レベルの効果と思います。もし具体的に計測できるのであればとても興味深いことだと思います。

唾液によるストレス評価法

ダンスショーの提案において。ストレスに対して分泌される唾液中の物質(例:アミラーゼ、コルチゾール)を測定することで、アンケート等に答えられない人に対してもその場で客観的な変化を観測できるそうです。医療従事者でなくとも簡単に唾液を採取し測定できるキットも販売されているとのこと。これも可能性を感じるものですが、看護師の方からは「患者に触れたり唾液を採取したりとなると、かなりハードルが高い」との意見が。

鑑賞者の表情やしぐさの変化などを分析する

ダンスショーの提案において。複数のビデオで定点観測した撮影記録から、さまざまな専門家(認知科学、脳神経学、精神科医、医師、看護学、心理学、芸術学、ダンサーなど)に分析を依頼するという案がありました。こちらも倫理面からすべての鑑賞者(本人もしくは家族)から撮影許可を取るなどという難しさはあり、今回の実現は……ですが、可能性を感じます!

他にも夜間のナースコールの減少を調べるなど、方法はいろいろとあるのだなと思いました。企画検討会でここまでの話し合いができて充実でした。そのため予定の2時間をオーバーし、21時過ぎまで話し合いが続いてしまったのですが……。近くのおいしい居酒屋で二次会も行い、さらに議論を続けたのでした。
いよいよ次回は、厚生院での企画プレゼンとなります。4つの提案をどのように厚生院に持っていくか、しばし事務局で議論し、参加者の皆さんに相談したいと思います。(寺井)



話は前後しますが…
受講生の皆さんとのワークショップ(WS)が始まる前、事務局メンバーは実施場所となる名古屋市厚生院さんを訪れ、事前の打ち合わせを行っていました。当初より今年度のWSを厚生院さんで行いたい旨お伝えし、内諾はいただいていたのですが、アート活動を実際にするとなると施設管理の方や現場の看護師さんなどを交えて具体的な調整が必要となります。電話やメールのやり取りはあったものの、皆さんとの顔合わせはこの日が初でした。おそらく厚生院さんとしても「アートといっても一体どんなことを…」と不安に感じられる部分があったと想像します。

ヘルスケア・アートの事務局からは、「厚生院さんにおけるアート活動案」という資料で目的と参加者、スケジュール、アート活動内容案、実施体制を示しました。アート活動については、空間アート、作品展示、体験イベント、施設広報といった例をまとめた「療養環境におけるアート活動事例」という資料も用意し、説明をしました。
厚生院さんからは率直に「アートというのは壁にペンキで色を塗るようなものをイメージしていた」という声もいただき、事前に制作したアートを設置することも可能であることや、屋内だけでなく屋外でもよいこと、そのほか日頃の困りごとを解決するのに役立つ施策でもよいような話をしました。(こうした提案については私たちも夏の連続講座で学んだことが多々あり、やりとりに役立てられたと実感! 連続講座の講義内容は随時HPの事例集にアップしていきます)

厚生院さんとこの日にどのような話ができるかドキドキしながらの顔合わせでしたが、入所者の方の状況を具体的にうかがったり、実施期間に予定されている活動をうかがったりと、具体的な情報交換ができました。

たとえば…
 ・壁にペンキを塗ることについては、においがどうしても気になるという話があった。(壁面アートについてはほぼ無臭の塗料を使用しているため問題なく思うという話をしたが、スタッフの方々の抵抗感が強くあるようだったので今回の場合は推奨しづらいと感じた。また長時間にわたり生活スペースの中で作業場を確保することも好ましくないように感じた)
 ・高齢者の多い施設であることを考慮してほしいという話があった。たとえば認知症の方に効果のあることはないだろうか?(そういったアートがあることは私たちも認識しているが、受講生とともに検討したいとお伝えした)
 ・寝たきりの方が多く、天井を見ている時間が長い。まぶしいし、殺風景である。何かできないだろうか? 自由に歩ける人はほぼおらず、他の方も車椅子やストレッチャーでの移動である。(これも厚生院の特徴として、何か考えたいと思う)
 ・入所者の方が日頃楽しみにしていることは、入浴時間である人は多いと思われる。(楽しみな時間がもっと楽しくなる工夫はいいですね。連続講座中のやりとりで、受講生からも入浴時間に関するアイディアは出ていたことをお伝えした)
 ・1月初中旬は新年のイベントで鏡開き、1月末は節分で豆まきイベント、2月末は七段のひな飾りを講堂の檀上に飾るイベントがある。(イベントにからめた催しを考えるのはよさそうである。春を感じられるイベントや手作りグッズのプレゼントなどもいいですねという話をした)
 ・ひな祭りは女性のイベントというイメージがあるため、男性が楽しみになるという視点がほしい。(なるほど…)
 ・打ち合わせなどは平日の日中が行いやすい。


ひな祭りイベントに関連し、会場になる講堂を利用したコンサートや展示会などのイベントはどうかという話をするとスタッフの方々の反応が上々でした。講堂は入所者やスタッフさんの日頃の活動スペースではなくイベント時のみ利用する場所であるため、アートの展示があっても邪魔になりづらく、作業時間も確保しやすいということなのです。
早速、当日のうちに講堂を案内いただくことにしました。

けっこう広い空間で、ステージがあり、窓も多くて明るい空間です。壁にはピクチャーレールもあって壁面に飾りをすることも可能そうでした。カラオケもありますよ! とのことで、プロジェクターや音響の設備もあるようです。
こうしたスペースがあることが分かり、時期的にも「ひな祭り」「春」に加えて「高齢者」といったテーマを柱にして、ワークショップのアートを考えていくことになったのでした。

アートマネジメントの推進事業をするにあたって、運営委員の先生方から「この事業をどうやって進めていくかを考えることそのものがマネジメントです」という話を聞いており……なるべく記録を書き留めねば! と思う事務局なのでした。(寺井)


高齢者の医療福祉施設である名古屋市厚生院を対象に、アート活動を実際に行うワークショップ(WS)が始まりました。12月19日は、その前段としての企画WS。12月21日は実践WS第1回で、厚生院を訪れて施設見学やスタッフさんへのヒアリング、メンバーでの話し合いを行いました。

参加者は受講生(一般)8名、鈴木教授(講師)、高野さん(ファシリテーター)、事務局2名。
こうした見学や打ち合わせ等の日時は、施設の受け入れ態勢を考えるとどうしても平日昼間となり(土日は院内のスタッフ数が少なく対応しづらいそうです)、一般の方からどれほど参加してもらえるだろうかというのが懸念でしたが、一連の実践WSへの申込みは13名にのぼりました! アーティスト、インテリアコーディネーター、会社から業務の一環として参加される方、休暇を取って参加を希望する看護師など、それぞれ業務を調整されるそうです。参加者の関心度の高さは特筆すべきことと感じます。

受講生とともに施設内を見学

厚生院講堂で厚生院のスタッフの方々との顔合わせをし、早速院内の見学に移りました。見学中はスタッフさんが複数同行くださり、つど質問を受けてくださいました。

厚生院は、以下をもつ複合施設になっています。
○特別養護老人ホーム、3フロア、300床
○救護施設、80床
○附属病院(外来と入院)204床

おもにアートを導入するのは特別養護老人ホームの入所者の方々の生活スペースやイベントスペース(講堂)となります。そのため特養の見学に最も多くの時間を割きました。
見学では、フロアによって入所者の介護の必要な度合が違うことの説明があり、例えば2階と4階はベッドで食事の介助を必要としない方が多いことから広い食堂があること、3階はほぼ寝たきりの方が多いことから食堂はないことなどの説明がありました。2階と4階では車いすで移動される方も多く、見学日は入浴日だったので廊下で順番を待っている方がいましたが、3階は寝たまま入浴をされるため、頻繁にスタッフがストレッチャーで入浴する入所者を乗せて移動する様子が見られました。
300床あるため週4日かけて入所者が順番に入浴できるようにしており、木曜だけは入浴日ではないのでイベントは木曜にしているそうです。前日がクリスマス会だったそうで、フロアの入り口の掲示板にはイベントの様子がすでに写真で飾られていました。

気づいた点をポイントとしてまとめると…
・建物が築36年であるため全体的に老朽化が感じられる(塗装の剥がれ、天井が低いなど)
・特養は病院ではないため生花が許可されている
・部屋の入り口に目印になる名前やぬいぐるみがあり分かりやすさの配慮をしている
・車いすの人に配慮したカーテンなどの仕切り
・クリスマスなどの季節を感じられる飾りつけが随所にある
・開催されたイベントの様子の写真が廊下に貼られていた など

受講者は質問をしながら細かい工夫や設備の様子などを見学し、参加者それぞれの視点での気づきがあったようです。例えば床、扉、入り口の飾り、天井の高さ、窓からの景色、入所者の方々の目線の高さ、介助の必要な度合などについて……
病棟の見学と、救護フロアの見学もしました。


床の素材や状態にも目を配る

スタッフ手作りのクリスマスの飾りが数多く見られた

視察を終え、参加者同士で意見交換をする


講堂の場を借りて、視察を終えて感じたことやアート活動について話し合いました。
12月19日企画WSで話されたことを確認しつつ、実際に見学して分かったことを踏まえて自由に意見交換するなかで、「思いのほか入所者の方々の重症度が大きく、先日考えた参加型のアートというのは難しいと思った」「寝たきりの方は移動中も天井を見ていることが多いし、車椅子の方もどちらかというと下の方を見ていることが多いように思った」などの声が上がりました。
その方々に提案できるアート活動はどのようなことか? 具体的にしていくためにも、さらに厚生院スタッフさんに質問をしました。

質疑応答の結果は…
・ハンドマッサージやメイクなどの案もあったが難しそうであること
・足浴などの案があったが講堂では現実的ではなさそうであること
・フロアでの飾りつけについて、動線に当たらなければ可能であること
 ただし設置にとても時間がかかるとか、塗料のにおいがあるなどはよろしくないこと
・2月28日にはひな祭りイベントがあり、保育園児がAM中に1時間、3階フロアの方々と交流すること
 その保育園児と入所者の交流のきっかけを作るようなアイデアは十分検討可能であること
・ひな祭りイベントでは、午前と午後で合わせて4回、各1時間、交代で入所者の方が講堂に来る予定であること(そのうち1回が保育園児参加)


話し合いでメモされた内容

第2回に向けて、アイデアを具体化できる企画書の作成を

第2回に向けて、企画案を考える宿題をお願いしました。企画にあたっては、「アートの目的や効果」「対象者や人数」「効果測定の方法」「外部協力者の要・不要」「費用の目安」「準備スケジュール」といった項目も検討してもらえるよう、企画書のひな型を提示してみました。 話し合いで出た案、出なかった案にこだわらず、受講生それぞれが具体化できそうなことややりたいことを考えることにしました。

評価についてはどう実現したらよいのかといった話も出ました。鈴木教授からは「評価は重要だが、実際に取得するのは容易ではない」といったフォローもあり、意識として持っていたいことで共通認識にできたかと思います。少なくとも今回の場合は入所者さんにアンケート回答をお願いするのは困難と思われるので、スタッフやご家族にお願いしたり、他に入所者さんの思いを読み取れる方法があればという話をしました。


企画書のひな型を提示しました

ヘルスケア・アートの導入、そのマネジメントで目指すところは?

すでにホスピタルアートの経験がある受講生からは、「このプロジェクトでメンバーが目指すことをもっと共有しておくべきではないか」といった意見も出ました。その方の話では、「アートはすでに病院でも取り組んでいるし、病院スタッフでもできること。外部スタッフやアーティストが入ることの違いは何なのかとしばしば問われる」のだそうです。確かに厚生院でもクリスマスなどの飾りつけが豊富に取り組まれ、季節のイベントも定期的に行われています。その際にアートディレクターや専門家が入るメリットはどこにあるのでしょうか?

分かりやすいところでは「クオリティ」があると思います。評価とも関わってくることですが、日頃体験できないような質の高い本物のアートに触れることで、患者さん入所者さんに日頃得られない効果が起こるかもしれません。また専門の業者が入ることで、施設が使いやすくなる上に見栄えもよくなるとか、長持ちするとか、明らかに利便性もデザイン性もよくなることがあるかもしれません。
……これは私の個人的な考えに過ぎないのですが。
このプロジェクトも含め、経験を積み、明らかにしていけたらいいですね。

鈴木教授からは、「こうした形で一般の皆さんとヘルスケア・アートの導入WSに取り組むのは初めてのこと。手探りな部分もありますが、まずはやってみましょう」と激励の言葉がありました。

じつはこの見学会のあと、2名の受講生から忙しさや内容の難しさから参加辞退の申し入れがありました。実施期間が短いうえに取り組む内容が多く、一般の方を対象とする講座(WS)としては忙しく難易度の高いものになっていると認識しています。スケジュールに余裕がないのは反省点ですが、これも一つの機会、経験として、引き続きご参加いただく受講生の皆さんで進めていきたいところです。(寺井)


ヘルスケアアートマネジメントに関する実践の前段として、企画に関するワークショップ(WS)を開催しました。今後、2~3月に向けて名古屋市厚生院の中でのアートワークに取り組んでいくため、この日も希望を聞いたうえで厚生院を対象として企画することにしました。
大きな流れとしては、ヘルスケア・アートの幅広いあり方、可能性、また患者や入所者の抱える課題について学んだあと、事務局から厚生院における実践WSの概要説明をしたのち、3つのテーブルに分かれて「アイディア記入シート」に企画を書き出していきます。
参加者は18名(女性が13名)でした。
※SNSやHPを通して呼びかけたこともあり、連続講座から続けてのご参加が17名

名古屋市立大学によるヘルスケア・アート活動の導入プロセス、体制、内容



最初に、高野真悟さん(彫刻家、名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 博士後期課程)を講師として、名古屋市立大学の鈴木研究室で行ってきた活動を、導入プロセスや実施体制、方法といった企画に関する切り口で報告をいただきました。これは高野さんが研究論文としてまとめられた内容をもとにしているため、統計的な裏付けもあってとても詳細な導入プロセスをうかがうことができたと思います。
後半は、研究室内の活動にとどまらない、外部のアートマネジメントの専門家と協働したプロジェクトの報告もあり、受講生からは具体的な質問も受けていました。

高齢者が施設で暮らすこと

次に、鈴木賢一先生( 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 教授)を講師として、厚生院を意識して、おもに高齢者が利用する病院や福祉施設での事例について話していただきました。高野さんの事例と違って厳しい現実、落差について、建築的な問題や施設の集団生活で起こるストレスやギャップなどの報告がありました。
次回以降の実践WSで厚生院を訪れていく際の心構えにもなったと思います。

グループに分かれてヘルスケア・アートの企画、アイデア出し


厚生院の特徴やヒアリング結果から、このような話題をあらかじめお伝えしました。
・対象は高齢患者であること、認知症や身体的な介助の必要な方が多いこと
・時期的に2月末のひな祭りイベントに関連する内容が受け入れやすそう
・大人数が入ることができ、イベント時のみ利用している講堂は自由なアート活動がしやすそう

また今回のWSは「アートマネジメント」を大きな柱としているため、「アーティストと現場の橋渡し役」という視点も意識してもらえるようお伝えしています。アート活動は自身が行う以外にも、作家や業者への発注も可能です。

企画を考える際の資料としては、高野さんがまとめられた「ホスピタルアートの分類」という資料や、事務局がまとめた「療養環境におけるアート活動事例」という資料も受講生に渡しました。これは壁面アートや彫刻の設置といったよく見受けられる院内のアートのみがヘルスケア・アート活動ではないことをよく表していると思います。
(実際に資料を厚生院スタッフさんに見てもらったところ、「壁面アートだけだと思っていた」「イベントや施設のサイン計画もアートなんですか」というような声をもらったのです)

グループごとに企画案の発表


企画アイディアは、各グループで共通するものもあれば、異なる視点もありました(後日発表ポスターをアップしたいと思います)。「一人ひとりが参加してみんなでつくりあげる」という視点が最も大きなアイディアだったと思います。ほか、「ダンスや演劇など見て楽しめるものを」「視覚だけでなく、においや音を効果的に」といった、高齢者を意識したものも多く上がりました。

企画アイディアを書いてくださいといって、数分のあいだで各受講生から2~3のアイディアが書き出される様子をみて、受講生の皆さんはやはりヘルスケア・アートの分野に意識が高く熱心であるし、連続講座でたくさんインプットしてきたうえでのアウトプットの機会となり、いよいよここからどう皆さんの「アート」が現実になっていくのか、楽しみに感じました。これまでも連続講座では毎回「課題シート」に感想や生かしたいことを書いてもらっていましたが、企画を書き出すのは全く違う形です。事務局も初めての試み。皆さんと一緒に前進していきたいと思います。

引き続き、実践WSの初回の様子もレポートしていきます。(寺井)