事務局からのお知らせ

事務局からの連絡事項、活動報告など

12月下旬から3月初旬にかけて、高齢者の医療福祉施設である名古屋市厚生院にアートを実際に導入するワークショップを開催いたします!
現場見学やヒアリング、導入するアート活動の企画検討および実施、そして振り返りまで、
一連の活動を通して、ヘルスケア・アートやそのマネジメントについて学びます。

初回の日程が決まりましたので、ご案内いたします。
ご案内から開催まであまり余裕のない日程となりまして、申し訳ありません。
以降の日程は、参加者や厚生院のご都合などを確認しながら決めてまいります。

ヘルスケア・アートマネジメント実践ワークショップ@高齢者施設

初回「現場見学&ヒアリング」

日時:2018年12月21日(金)午前9:30~12:30
場所:名古屋市厚生院
スケジュール
9:30 地下鉄「本郷駅」東口(2番出口)に集合、車で厚生院へ移動
9:45 厚生院着
10:00 現地見学& ヒアリング
11:00 アート活動についての意見交換
参加無料、募集人数10名程度(先着順)

全体スケジュール

  1. 1.「現場見学&ヒアリング、意見交換」
  2. 日時: 2018年12月21日(金)午前9:30~12:30頃 場所:名古屋市厚生院
  3. 2.「アート活動の企画検討会」
  4. 日時:2019年1月上中旬  場所: 名古屋市内(参加者の集まりやすい日時や場所を設定)
  5. 3.「アート活動の企画を厚生院へ提案し、意見交換」
  6. 日時:1月下旬(厚生院さんの都合などを確認し決定) 場所:名古屋市厚生院
  7. 4.「3を受けて企画内容の再検討&ブラッシュアップ」
  8. 日時:1月下旬~2月上旬  場所: 名古屋市内(参加者の集まりやすい日時や場所を設定)
  9. 5.「アート活動の実施(設置または開催)」
  10. 日時:2月下旬~3月初旬 場所:名古屋市厚生院(予定)
  11. (アート活動内容や厚生院さんや参加者の都合など確認し決定)
  12. 6.「アート活動の振り返り(厚生院アンケートまたは ヒアリング )」
  13. 日時:3月上中旬  場所:名古屋市厚生院

アート活動の内容案

「高齢患者」「ひな祭り」に合わせた空間装飾や作品設置、体験や鑑賞など。
※現場見学とヒアリングの上、参加者で企画を考えます。

注意事項

※できるだけ多くの日程に参加いただけるとより実践的な力が習得できますが、都合により参加できない日程もあるかと思いますので、参加の仕方などは個別のご相談させていただきます。全日参加ができない場合でもお申込み・お問い合わせください
※12/19に予定している「ヘルスケア・アートマネジメント実践ワークショップ」に参加いただけると、より効果的です。
https://healthcare-art.net/news/notice/entry-49.html
※講座の参加者への交通費や謝金のお支払いはできません。

参加申込

初回12/21(金)の現場見学への参加を希望される方は、
12/17(月)までに、メールまたはFAXで
件名や見出しに「ヘルスケア・アート実践WS申込」と明記の上、
①お名前(ふりがな)②電話番号 ③メールアドレス ④年齢 ⑤職業 ⑥お住いの都道府県(愛知県の場合は市)をお知らせください。
※ 初回にご都合の悪い方も1月以降の活動にご参加いただけますので、期日以降も活動期間中は随時参加のお問い合わせを受け付けております。

<申込・問合先>
なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェクト事務局
E-mail healthcare_art@sda.nagoya-cu.ac.jp
FAX 052-721-3110(芸術工学部事務室)



関西大学高槻ミューズキャンパスおよび耳原総合病院で12月6日(木)に開催された
講演会を拝聴してきました。事務局の伊藤が印象に残ったものをレポートいたします。

「Art for Health in the UK 英国におけるホスピタルアートの展開」

講師 クライブ・パーキンソン氏
(マンチェスター・メトロポリタン大学 アート・フォー・ヘルス部門長)

昼の部は関西大学大学院社会安全研究科のPDM(英語による博士課程)設立を記念するセミナーとして、
夕方の部は耳原総合病院にて関西大学と堺市の連携事業として開催されました。
昼の部も夕方の部も、関西大学社会安全研究科の亀井克之教授がコーディネートをされ、
夕方の部は、近畿大学の森口ゆたか教授や、耳原総合病院の奥村伸二病院長もご登場され、
充実した講演会となりました。

関西大学での講義はまさかの通訳なしの英語のみの講義で、
英語力のない私は、通訳有の夕方の部(@耳原総合病院)までお邪魔して、
次のような話を聞いてきました。
(聞いた話を意訳しているので、パーキンソンさんの話そのままではありません)

「Designing Future Society for Our Lives」

講義スライドの表紙には、「Designing Future Society for Our Lives」。
直訳すれば「私たちの暮らしのための未来社会のデザイン」でしょうか。

パーキンソンさんの幼いころ、認知症だった祖母との思い出に始まり、
英国の「Arts for Health」というチャリティ組織についての話のほか、
英国での具体的なアート活動の例を教えてくださいました。

アート活動例

  • ・重い病を持つ子どもに、生演奏などの音楽体験をプレゼントすると、
  • 子どもたちは自然とリズムに合わせて体をゆらし全身で音楽を楽しんでいた。
  • その時間、子どもたちははいっときだけでも痛みを少し忘れ、充実した喜びの中にある。
  • ・重篤患者のある少女はアーティストとともに、自分の心音をつかったアート作品を作り上げた。
  • 作品が完成したとき彼女は既に亡くなっていたけれど、彼女の心音をつかったアートは
  • 帝都ギャラリーで展示もされ、作品を介して娘と対峙した母親は満ち足りた表情をしていた。
  • ・とある認知症の高齢女性がいて、普段は叫び這い寝転がるような行動をとる彼女が、
  • ある作品をじっくりと手や額で撫でまわしながら鑑賞したのち、それを「とても美しい」と言った。
  • 彼女は言葉や心を無くしたわけではないことが、はっきりと分かるできごとだった。
  • ・ホームレスの男性にゆっくりと時間をかけて話を聞くと、彼は詩や愛について、
  • 豊かに語った。

「Our Lives」を豊かにするアート

パーキンソンさんの英語の講義後に、関西大学の亀井教授が、
簡潔な要約とともに、
「英国のホスピタルアートは、壁に絵を飾るなんていうレベルは脱し、
音楽はもちろんサウンドを使ったアートまで、広く展開している。」
とお話しくださったように、
ただ環境や空間として、鑑賞する対象としてアートがあるだけでなく、
患者自身が表現するコンセプチュアルな作品にまでなっていました。

近畿大学の森口先生は、
「アートがすべてを解決する、ミラクルを起こすということではありません。
でも、重症の患者もホームレスも、アートだからこそ表現できるものがあり、
医療のできない部分をアートが可能にすることがある」と、
補足解説をしてくださいました。

それは、よくこうした活動で求められる「エビデンス」のように、
定量的な分かりやすい結果ではないのかもしれませんが、
確実に「Our Lives」を豊かにしています。

耳原総合病院での講演会に参加された方からは、
「作品、アートがあることで、患者が感情や情動を表現しやすくなり、
それは医療行為だけでは抜け落ちてしまう部分かもしれない」との声もあり、
なるほどと感じ入りました。

夕方の部の最後に亀井教授から、
「危機管理やマネジメントの分野でも"感性"が重視されていきてる」とのお話も聞き、
AIが飛躍的に活躍の場を広げる中、アートは多くの分野で必要とされるものなのだと
改めて思いました。

アートを取り入れる積極的なしくみを持つ英国

具体的なアートの事例だけではなく、
英国は国としてホスピタルアートを積極的に取り入れるしくみがあり、
格段に日本よりも進んでいる英国の状況のお話もうかがいました。

英国ではホスピタルアートの支援やコーディネートをしている組織が各地域にあり、
さらにその各地の取りまとめの組織が集まり、
医療環境の改善を全党派でやるべきと、政府へのはたらきかけ
超党派の議員グループが、アートの影響についてエビデンスを集め
「Creative-Health : the-Arts-for-Health-and-Wellbeing」として、
詳細なレポートを公表していいるそうです。
今年の 6月23日に開催した、
なごやヘルスケア・アートマネジメント推進事業のキックオフシンポジウムでも、
高野さんが「英国のチャリティ組織の役割」と題してお話をしてくださいましたが、
英国はアート活動の具体的内容だけでなく、社会の体制も格段に進んでいますね。

耳原総合病院のホスピタルアートのfacebookページでは、下記のキーメッセージを紹介されていました。

Creative Health:The Arts for Health and Wellbeing.
【key Messages】

  • ・The arts can help keep us well,aid our recovery and support longer better lived.
  • ・The arts can help meet major challengers facing health
  • and social care:ageing,long-term conditions,loneliness and
  • mental health.
  • ・The arts can help save money in the health service and social care.

(「Creative-Health : the-Arts-for-Health-and-Wellbeing」の詳細レポートは下記URLから)
http://www.artsandhealth.ie/wp-content/uploads/2017/07/Creative_Health_Inquiry_Report_2017.pdf

この冬に、私たちも高齢者福祉施設にアートワークを導入するワークショップを予定しているので、
そのアートワークを考える際に、今回の講義で聞いたお話を参考にしたいと思うと同時に、
日本でホスピタルアート、ヘルスケアアートを広めていくにはどうすればよいのか、
どういう体制や組織がありえるのかなどを、
自分自身、もっと勉強して考えて行きたいと思いました。

この度は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございました!


お待たせしました! ヘルスケア・アートマネジメント事業の後半のワークショップに関連して、「企画ワークショップ」を開催いたします。下記が詳しいご案内となります。先着順となりますため、お早目のご応募をお待ちしています。

ヘルスケア・アートマネジメント企画ワークショップ

療養環境にアートを導入するうえでの、プロセスや体制、アート活動の具体的な事例について、名古屋市立大学での取り組み等を紹介した上で、本ワークショップでは実際にアート企画のアイデアをグループで話し合い、考えます。

◆開催概要:

日時:2018年12月19日(水)18:30~21:00(18:00開場)
場所: 名古屋市立大学ミッドタウン名駅サテライト
(JPタワー 名古屋 5階ミッドタウンクリニック名駅 隣接)
名古屋駅より徒歩数分 ※連続講座と同じ会場です。

参加無料、募集人数20名(先着順)
 ※筆記用具をご持参ください。

◆ プログラム:

1)名古屋市立大学におけるヘルスケア・アート活動の導入プロセス、体制、内容  
 講師:高野 真悟(彫刻家、名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 博士後期課程)  
2)療養環境におけるヘルスケア・アートの事例  
 講師:鈴木 賢一( 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 教授)  
3)グループに分かれてヘルスケア・アートの企画、アイデア出し  
4)グループごとに企画案の発表  
 ※内容は変更することもございます  

◆参加申込

参加を希望される方は、12/12(水)までに、メールまたはFAXで、件名や見出しに「12/19ヘルスケア・アート企画WS申込」と明記の上、①お名前(ふりがな)②電話番号 ③メールアドレス ④年齢 ⑤職業 ⑥お住いの都道府県(愛知県の場合は市)をお知らせください。

<申込・問合先>  
なごやヘルスケア・アートマネジメント推進プロジェクト事務局  
E-mail healthcare_art@sda.nagoya-cu.ac.jp  
FAX 052-721-3110(芸術工学部事務室)


文化庁による「大学における文化芸術推進事業」の事業報告会が、東京の五反田(TOC GOTANDA MESSE )で開催されました。
本年度は全国の23大学によるさまざまな文化推進事業が採択されていて、名古屋市立大学は「ヘルスケア・アートマネジメント人材育成事業」を推進中。報告会には鈴木教授と研究室の高野さん、事務局の伊藤さんと寺井の4名で参加しました。

発表形式はポスターセッションで、2時間ほどのあいだ各大学をまわりながら説明を聞いたり説明をしたり。数年にわたって事業に取り組んでいる大学は報告書やパンフレットなどの成果物も豊富で、デザインや編集には力が入っていました。各大学の事業内容はいずれも芸術や地域との関わりをテーマにしていながらも、対象人材は学芸員やアートマネージャー、アーティスト、芸術に関心の高い社会人などさまざま。名古屋市立大学のように医療福祉をテーマにする事業は少数で、病院や福祉施設にアートを取り入れるための人材育成プロジェクトは他にはありませんでした。

※過去には類似事業として、筑波大学による「『適応力エキスパート』としてのアートマネジメント人材の育成 ~病院を活用した多様空間・異分野協働によるアートマネジメント能力の向上に向けて~」が採択されています


さて、ポスターセッションでは参加者投票があり、注目を集めた上位2大学は壇上でプレゼンの機会を得られます。なんと、名古屋市立大学は投票の結果上位2大学に選出され、15分の発表をすることに! もう1つ選出されたのは東京藝術大学大学院映像研究科でした。

慌ててその場で相談し、ホームページをプロジェクターで映しながら鈴木教授が事業の背景などを話しました。鈴木教授はやや緊張気味……。私たちは持ち込んだ講座のパンフレットを出席された方々に手渡しに回りましたが、どなたも興味深く手に取って見てくださいました。
思いがけず多くの大学・文化庁関係者の前で「ヘルスケア・アート」をPRでき、大きな成果が得られたと思います!

私自身は全国の多くのアートプロジェクトについて見聞きし、どんな方が参加しているのかや何を目指しているのかなどを質問できました。名古屋市立大学の「ヘルスケア・アート」は医療福祉がテーマだけあって、なかでも共感を呼びやすいプロジェクトだと感じます。それが本プロジェクトの特異性でもあると思います。

早いもので次年度企画を考える時期になっているため、今後の展開を考えていきたいと思います。(寺井)


報告会で使用したA1ポスター


アートミーツケア学会というものがあることを、恥ずかしながら事業に関わって初めて知りました。その大会が11月初旬に開催され、ヘルスケア・アートからも複数名参加。プレゼンが同時進行する分科会形式もあってすべては聞けませんでしたが、印象的だったものを寺井がレポートします。学会については下記HPをご参照ください。

アートミーツケア学会
学会のプログラム詳細(運営母体の一般財団法人たんぽぽの家にリンクしています)

言葉と絵に注目して語る 生きなおす力


基調講演は作家の柳田邦男さんの「生きなおす力を探索する」。死や病い、災害や事故、経済的な破たんといった個人や地域などの再生やその力について、レジリエンスという言葉が使われるようになりました。さまざまな生きなおす力があるなかで、柳田さんはとくに「言葉」と「絵(絵本)」の力に注目して話されました。

言葉の力では――
ショックや悲しみ、苦しみ、怒りといった心の中の混沌状態が、言葉で表現し文脈を作ることで整理され、心にドアを開けることができる。自らの人生の意味を発見し、納得し、さらに深く表現ができ、心の整理はもっと進む。具体的に俳句や闘病記、傾聴を紹介し、心の中の整理が生きる力につながることを説きました。

絵の力では――
絵本は子どものためのものであるという考えはウソであると話し、絵本が心の深いところに響き生きなおす力につながった事例を3つ紹介されました。「だいじょうぶだよ、ゾウさん」という絵本(上写真)では、幼い少女が物語に自分を重ねることで、きょうだいの死を受け入れることができたという話でした。また絵で表現することの意味として、言葉では表現できなくても絵に心の世界が現れること(絵をかくワークショップの可能性)などを紹介されました。


最後にこれは私にもできそう!と思う柳田さんの話がありました。
絵本を読み聞かせするとき、「ただ読むだけではダメ」であると。まず子ども(相手)の興味をひきつけなくてはならない。そのとき柳田さんは上のような雲の写真を見せるそうです。

「これ、何に見える?」


すると子どもは好き勝手にあれこれ想像して言ってくれるそうです。柳田さんもちょっと描き加えて、「ラクダに見えるね!」などと答えるそうです。こんなやりとり一つを最初にするだけで子どもの目線がぐっと集まり、一気に話し手と聞き手の距離が縮まるそうです。例えば医師と患者といった間がらでも、こうしたアイディア一つで変わりそうだなと思ったのでした。

ケアするアーティストに必要な芸術的スキルと感性とは


即興で音楽をつくるワークショップ(WS)もありました。世界で芸術教育プログラムを実践されているマイケル・スペンサーさんのインタラクティブ・プレゼンテーションです。内容説明の一文目にはこう書いてありました。「ケアをする立場で働くアーティストに必要なのはさまざまなスキルと感性です」。

その場で何やら音楽のWSをすることは分かったのですが、いったい何が始まるのかみなさん不思議な顔で座っていました。 はがき大の紙に異なるマーカーで絵をかいたり、何種類かの楽器を手にしてスタンバイしたり。説明を聞き、言われた通りある条件が重なったら自分の楽器の音を鳴らします。すると約5分ほど、夜明けから始まり森の中の風景が広がって鳥がさえずり、そして雨が降り、また夜が来る。そんな即興音楽が奏でられました。色と音が空間をつくることを体験するWSだったようです。
マイクさんはこうしたWSを通して芸術的・社会的な相互交流(インタラクティブ・パーティシペーション)を引き起こし、社会的孤立感を軽減させたり自尊心と独自能力を高めたいと考えているそうです。

エビデンスが1つあるだけでガラリと世界が変わる


「エビデンスとは何か? アート活動におけるジレンマ」では、加藤先生(名古屋市立大学大学院教授、学長特別補佐)と森口先生(アートミーツケア学会副会長、美術家、近畿大学教授)が「なぜ今エビデンスなのか」という話題提供をされ、参加者との対話をしました。

イギリスでは社会的問題の解決にアートが役立つといわれており、それはアートによって国民の幸福度が上がるという具体的なエビデンスが得られているからだそうです。森口先生からはそうしたイギリスの例を示す報告のスライド提示がありました。加藤先生は、日本においてもアート活動をするにはエビデンスを示していかなければ予算獲得が今後厳しくなるのではないかという予測を話し、ホスピタルアートであれば「入院日数が減った」「それによって医療費も削減できた」などの病院経営としても喜ばしいことが結果として現れれば文化予算の獲得がしやすいと話されました。

参加者からは、「定量で表せられないアートの効果もある」などの話がある一方、「緩和ケアで抗がん剤を使うよりも寿命がのびたというエビデンスが出たことによって緩和ケアに世界中の注目が集まり、ムーブメントのようになった」という話もありました。

事業を継続するための事業評価の重要性

佐倉市立美術館からは、対話による美術鑑賞プロジェクト「ミテ・ハナソウ」プロジェクトの一環として、介護老人保健施設でのアート活動の報告がありました。それ自体も興味深かったのですが、事業継続のために外部専門家に依頼してプロジェクトの調査分析を行っているという点に驚きました。その結果はきっちりと報告書にもまとまっており、調査分析を通してただ評価をしたいわけではなく、プロジェクトの目的や意味なども浮き上がっていることに共感しました。

介護老人保健施設での活動については、「高齢者の心身がどれだけ健康になったかというエビデンスをとるには至っていません」ということでしたが、事業を継続するためにエビデンスは有益であると話していました。

この発表では、評価指標をつくる枠組みとして「ロジックモデル」という概念や、「社会的インパクト評価」の導入、「アウトリーチ」や「アウトカム」という考え方、また美術館の作品鑑賞の方法として「ビジュアルシンキングストラテジ(対話型美術鑑賞)」という手法の紹介もあり、視野を広げることができました。

エビデンスを重ねることで病院へのアートの導入が進む

札幌市立大学から、アートインホスピタル「風の家/Breathing House」の実践報告がありました。国際的に評価されている美術家であり建築家でもある山田良さんをアーティストにむかえ、山田さんの意見を重視しながら進められたプロジェクトで、参考になる要素が多い発表でした。まず、作家が病院にふさわしいアート作品を考え制作し、それを病院に売り込むという手法がめずらしいと思いました。実際に札幌市内のすべての病院に提案したところ1病院から「ぜひやりたい」との回答が得られ、設置し、効果を知るためのアンケートを取ったそうです。そこで得られた結果からアート作品を改良し、北海道内の全359病院に効果を示すエビデンスを添えて再度提案したところ、「ぜひやりたい」と回答した病院が7病院に増えたそうです。「実際の設置状況と効果についての研究成果(エビデンス)の提示が影響した可能性が高い」と報告されています。

名古屋市立大学でも応用できそうな実践報告で、これからの企画の参考にしたいと思います。

具体的な病気や症状に対する教材制作では、エビデンスを明らかにしやすい

筑波大学でメディアアートなどを研究されている村上先生の報告で「生活習慣病予防教材の開発に関わる芸術と医療の連携について」がありました。こちらは医療福祉空間にアートを導入するといった事例ではありませんが、エビデンスを明らかにするという話を具体的に聞かせてもらいました。また医療側と芸術側の連携プロジェクトで相互が有効に機能するためにはどのようなことが大事であるか、聞くことができました。

この事例のように、生活習慣病予防のためのデザイン、アートといった、目的がはっきりした創作物であれば、必要なエビデンスはその病気において改善があったかということです。医療関係者と協力すれば数値的な効果がはっきりと取得できることになります。医療福祉空間にアートを導入する活動でも参考になりそうです。