2月28日 実践WS第6回 企画実施しました
名古屋市の医療福祉センター、厚生院さんにおけるひな祭りイベントの本番でした。会場装飾の準備はほぼ前日のうちにできていたため、当日は以下のような活動をしていました。順に紹介していきます。
目玉企画のコンテンポラリーダンス公演(ダンサー:池端美紀さん)
始まってみないと分からないことが多く、池端さんや担当した受講生らは内心ひやひやされた場面もあったようですが、8回のダンス公演をぶじに終えることができました。あらかじめ厚生院さんからうかがっていた当日の状況から、ダンスは5分程度の作品にし、各フロアの方が訪れる45分のあいだに間をあけて二度公演する、音楽と振り付けは同じものにすることを決めていました。会場には例年も行っているという呈茶のボランティアさんが複数名来られていて、ステージ横の部屋でお湯を沸かしたりお茶菓子を並べたりということを同時にされていて、ダンサーさんの控室の動線と重なるのはやや心配な点でしたが、混雑しながらも大きな問題や混乱はなく進行できたのでよかったです。
>>10時頃からスタート 特養4階の方が来場
最初の回は入所者さんが少なめで15名程度。車いすの方々で、スペースにはゆとりがありました。池端さんはこの日初の公演。そして我々スタッフも初めて池端さんのダンスを見ます。4階フロアの関係者以外に、病棟の医師と思われる方々も「コンテンポラリーダンスってどんなものなんだろう」という面持ちで何名か見に来られていました。アロマの香りに気付いて話す看護師さんも見受けられました。
ダンスの音楽は過去に池端さんが作曲を依頼されたというオリジナルのもので、タイトルは「それは溶けて、やがてまた大きなそれになる」。その時の振り付けをアレンジして今回のダンスを創作されたそうです。池端さん曰く、具体的な何かの行為や動作を動きに取り入れたそうです。見る人がいろいろなイメージを膨らませやすいんだとか。後で聞いた話では、最初の回は振り付けしてきたものをそのまま踊るような形になったということでした。特定のジャンルに当てはめにくい、様々な抽象的な動きがある、不思議とも懐かしいとも神秘的とも形容できるような、まさにコンテンポラリーダンスというものでした。
本当は二度公演する予定でしたが、様子を見ているうちに状況が変わっていきます。
>>10時30分頃 保育園児さんが訪問し始める
特養4階の方がいるうちに、保育園児さんが来場し始めます。おそらく年少さんから年長さんまで時間差で順にやってくるようで、園児さんも椅子に座ってお茶とお菓子をいただきました。
>>10時45分頃 特養3階の方が来場し始める
特養3階の方はストレッチャーの方が多く、保育園児さんや呈茶ボランティアさんなどで会場がかなり混雑。先ほどの回ではしなかったですが、厚生院の担当者さんがマイクで会場に声をかけて池端さんを紹介し、池端さんのダンスが始まるという流れになりました。
子どもがじ~っとダンスを見ているので、池端さんも子どもを意識した面白い表情や動きをしているようで、私たちスタッフも「あれ?さっきとは違う踊りがあったぞ」と分かるようになります。ダンスが終わると池端さんは一礼してサッと控室に戻るのですが、必ずまた戻ってくるようにし、ダンスを見た方々に声をかけて交流してくれました。子どもたちは「誰に習ったの?」「僕もダンスしたい」などと話していたようです。
11時半頃にかけて池端さんはもう一度特養3階の方と園児さんに向けてダンス公演を行い、午前中を終えました。
>>14時頃 救護フロアの方が来場し、ダンス始まる
車椅子か自分で歩ける方もいるため、来場される方々がとても多かったです。ダンスエリアは講堂の中央で、その周りをコの字の形で囲むように机を設置していましたが、机を増やして多くの入所者さんに見てもらいました。池端さんはのびのびとした様子でダンスをし、二度目の公演ではさらにリラックスした様子でした。後でそのことを聞くと、一度目は見ている入所者さんが「これは何だろう」「この人は誰だろう」という様子だけれど、二度目は様子が分かっているのでニコニコとされていて自然と目も合い、笑いかけられるので池端さん自身も笑顔になったということでした。公演のあとの交流でも、「子どもの頃を思い出した」「私も踊りたくなった」「どこの国の踊りなの?」「すてきねえ」などと会話が弾んでいました。
>>14時45分頃 特養2階の方が来場し始める
救護フロアと同様に、歩けるまではいかなくても車椅子なら自身で移動できる方が多く、やはり来場される入所者さんが多くなりました。一度目の公演が終わった後「アンコール!」というかけ声があがり、それを受けて池端さんが二度目の公演をするという場面も。ダンサーさんと入所者さんがダンスを介してコミュニケーションを成立させている様子が見て取れたのはアートの力を感じる瞬間でした。
予定通り15時半頃に入所者さんに向けたステージをすべて終えました。最後に池端さんが私たち事業の受講生やスタッフに向けてダンスをしてくださり、それが8回目の公演となりました。じつは当日はあいにくの雨で、にもかかわらず池端さんは衣装などを用意した大きな荷物を持って雨の中早朝から移動しなければならず、さらにいろいろな思いで前夜は眠れなかったそうで、短い睡眠時間でかけつけていたとのこと。本当にありがとうございました。
ひな祭りカードを楽しんでもらう
ひな祭りカードをデザインして事前に厚生院さんに渡していました。厚生院スタッフの方々に折り紙でひな人形を折ってもらい(折るのは簡単ですが入所者さんの数が多いためたいへんだったと思います)、メッセージを記入するなどして入所者さんに渡して季節を感じてもらったり交流してもらったりする企画ですが、一部は来場する保育園児さんにも作成をお願いしていました。園児さんらは会場で、作ってきたカードを入所者の方々に渡していました。
イベント後のヒアリングでは、やはりカード制作は厚生院スタッフさんにとって負担に感じるところもあったようですが、これは私たちが制作を依頼するタイミングが遅かったのも大きな要因です。次があるならば3~4週間前に渡すなどして、うまく日々の活動に取り入れてもらえるようにするべきと思いました。反省点です。ただカードの評判が悪いわけではなく、入所者の方々はイベント後もカードを壁などに貼って飾ってくださっていると聞くと嬉しく思いました。
効果測定のための出口アンケート
「参加前の気分」と「参加後の気分」を、5段階で評価してもらうアンケートを当日行いました。入所者の方々に声をかけ、気分について聞いていきます。出口アンケートとしていますが、実際にはダンスを見学し終えた方々に私たちから声をかけていきました。介助されているスタッフさんらには紙の事後アンケートをお願いしているため、なるべく入所者の方を優先しました。
出口アンケートの結果詳細(入所者のみの結果、合計106人 ※重複して取得している可能性はあり)
参加前は「普通」が最多だったが、参加後は「上機嫌」が最多得票となった。
【参加前の気分】上機嫌18 まあまあ機嫌良い24 普通55 まあまあ機嫌悪い8 機嫌悪い1
【参加後の気分】上機嫌66 まあまあ機嫌良い26 普通13 まあまあ機嫌悪い0 機嫌悪い1
この活動について、医療施設で働く受講生から「本当に必要だったのか?」という声もありました。
入所者さんらがアートを楽しむことを最大の目的と考えると、アンケートのために時間を割いてもらったり、気が散ったりすることがいいのかという理由です。一方でこの活動によって受講生や私たち事業スタッフが直接入所者さんと会話できるチャンスが生まれるという二次的な効果も認められました。アンケートがなければ声をかけにいくきっかけがなかったかもしれません。厚生院スタッフさんらから取得した事後アンケートの結果でもこうした事前事後の変化を聞いているのですが、出口アンケートの方が母数が多く、よりリアルな数値が取れたと感じます。新聞の記事に数値を使ってもらえたことを考えると、こうした活動を普及していくためにも有用な活動だったと言いたいところです。しかし受講生の発言からさまざまな立場や視点を学ばせてもらい、受講生同士にも、事務局にも、刺激になりました。
受講生秋田さんによるメディアアート作品体験
講堂でダンス公演を行っているあいだ、午前と午後に分けてメディアアートの作品体験も行なっていました。これは名古屋市立大学芸術工学研究科に所属する受講生の秋田さんが今回のために制作した作品で、人の体温によって色や形状が変化するサーモクロミック素材を使った作品で、「視覚変化する表現の提供」と「触角と視覚によるインタラクティブな体験」を行い、入所者さんの感性に訴求する方法と可能性を探りたいということでした。
厚生院スタッフさんらの感想としては、なかなか理解できない、分からないので、何とも言えないということでしたが、秋田さんご自身の体験は詳細なレポートにして残してくれています。
関連リンク
ヘルスケアアートワークショップ全8回(厚生院WS)実施報告
https://healthcare-art.net/news/diary/entry-76.html
実践WS 中日新聞(名古屋市民版)に載りました
https://healthcare-art.net/news/notice/entry-73.html
実践WS ポスター作成と報道発表
https://healthcare-art.net/news/notice/entry-77.html