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2019実践ワークショップ シールを利用した空間装飾の実験

学内でのシールによる壁面装飾の試しの様子


2019年度 実践ワークショップの受講生によるヘルスケアアート企画の中に、
シールを使った壁面装飾がありました。
その特徴として、

  • 壁に絵を描くよりも簡単に装飾ができ、汚れや匂いなどの心配も少ない。
  • 患者さんや施設スタッフも気軽に参加できる。
  • 利用者とスタッフのコミュニケーションや、気分転換のきっかけとなる。

などが挙げられ、
他の受講生や講師からも評価が高く、活発な意見交換ができました。

◆マスキングテープを使っての試作


ワークショップを進める中で、提案した受講生が、シールの素材としてマスキングテープを使うことを発案され、オリジナルのマスキングテープを数多く開発されている西川コミュニケーションズに相談をし、実験的に壁面装飾に使えそうな大きいサイズでマスキングテープシールを製作していただきました。
3月頃に医療福祉施設で使用していただけることを想定し、シールの題材は桜と枝となりました。

マスキングテープを選択したことにより、次のような特徴も生まれました。

  • 剥がしたあとの糊残りが少ないので、直接壁に貼ることができる。
  • 粘着性が弱いので、より気軽に貼れる。
  • 恒常的な装飾には不向きだが、季節や行事で変化をつけていくことに適している。

◆大学内でのシールによる壁面装飾の試し


製作いただいたマスキングテープシールで、試しに大学内の白い壁面に桜の花を咲かせました。
スタッフの子どもも一緒に参加し、子どもが楽しんで参加できること、
空間が明るく、雰囲気が和らぐことを実感しました。
また粘着力が弱いので、壁への負担は少ないですが、
はがした後に再度はるとはがれやすいといったことも分かりました。

このときの様子を動画に編集したものがこちらです。(クリックすると別ページが開きます)
シールを貼ってみんなで育てる散歩道


Youtube:シールを貼ってみんなで育てる散歩道


◆医療福祉施設での桜シールの使用とその感想


製作した桜のマスキングテープは、実践ワークショップの参加者の関係する医療福祉施設や、
交流のある方にお渡しし、実際に使っていただきました。
その結果次のようなご報告をいただきました。

●南医療生協 かなめ病院(リハビリテーション病院)

ワークショップ受講生の作業療法士の方が施設内で呼びかけ、利用していただきました。
以下がその報告です。
医療スタッフや利用者の方がシール貼りを楽しまれたことのほか、
リハビリテーション病院ということで、患者さんのリハビリに活用されたという点が興味深いです。


●名古屋市立東部医療センター

施設建て替え時にヘルスケアアートを導入され、地域のモチーフを描いた壁画があり、
その壁画に桜のシールを組み合わせて季節感を演出されました。
新病棟入り口にある名古屋城のシルエットに「花咲かせましょう!」と、
通りがかる患者さんやドクター、納入業者さん、お見舞い、看護師さんなどに声をかけ、
参加していただきました。
ワークショップ受講生の施設スタッフ(看護師)が呼びかけをされ、
日時と貼る場所を決めるなどしてくださいました。
施設内での活動は、彼女のようにヘルスケアアートに関心を持ってくれる施設スタッフの存在は重要です。

その後、「散り桜」から「葉桜」へと、変化をさせ季節感のある楽しみ方を継続的にされたそうです。


●やまかわこどもクリニック

以前、鈴木研究室でアートを施工させていただいた名古屋市のやまかわこどもクリニックでも、
既存のアートとうまく組み合わせて季節感のある空間を演出されました。



桜シールについてクリニックの保育士さんのブログでご紹介いただきました。
▼やまかわこどもクリニック:保育士ブログ「春ですね」

壁の素材にもよると思うのですが、
実は、今回のシールは一週間くらいで剥がれてきてしまったそうです。
それがちょうど「本物の桜みたいで風情があるね〜」と好評だったということですが、
マスキングテープという素材の特徴を改めて考えてみる必要があると感じました。

ブログを書いてくださった保育士さんからは、
「何より新型コロナでみんなの気持ちが滅入っている時なので、
 短い間でしたがかなり癒しの時間となりました。ありがとうございました!」
との嬉しい感想もいただきました。


◆マスキングテープのヘルスケアアートへの利用の他事例

マスキングテープは扱いやすく、そのマットな質感や色あいが人気で、
アートやクラフトの素材としてさまざまな活用がされていますが、
ちょうどヘルスケアの分野でも下記のような取り組みがありました。

アートミーツケア学会のオンラインジャーナル第11号より
[実践報告]健康と癒しの両立を目指して
―徳島大学病院におけるマスキングテープアートの試み(2018 年度)―
http://artmeetscare.org/wp-content/uploads/2020/03/K.Tanaka_vol11_5566.pdf

論文の中で、下記のように評価をされていて、今回の桜シールと重なる記述が興味深く感じました。
「扱いが容易で衛生的で費用負担も少なく、原状回復が可能なため気軽に取り組むことができる」と、
「緊張感の高い空間の中で、時間を持て余し、楽しみが少ない患者さんにも喜んでもらうと共に、
 慌ただしく働く職員にとっても癒しの場を提供することができた」

◆さいごに

いくつかの施設で実験的に桜のシールを使っていただきましたが、
想定していたように、さまざまな方に気軽に参加していただきながら、
空間に季節感や彩を取り入れる有効な手段であることが分かりました。

シールをまとめた量で発注することができれば、費用は軽減できますし、
今回の少ない実施例の中でも、
利用者の方のリハビリや、スタッフの癒しなどの効果が見られ、
とても可能性のある企画だと感じます。
今後も継続して取り組んでいければと思います。


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