事務局からのお知らせ

事務局からの連絡事項、活動報告など

この日は個別に企画を持ち寄り、発表&検討をしました。参加者は受講生8名、見学者1名、鈴木教授(講師)、高野さん(ファシリテーター)、事務局2名。
はじめに今回のWSに参加した理由や、連続講座でヘルスケアアートを学んで感じたことなどを含めた自己紹介をお願いしました。そうした背景から企画が出てきていることや、厚生院WSで目指すところの目線合わせになればと思ったためです。一通り自己紹介や思いを聞くだけでそこそこの時間を使いましたが、結果皆さんがさまざまな専門分野にいながらヘルスケアアートを学ぼうと思った経緯などを詳しく知れ、大事なプロセスだったかと思います。

なお参加者の職業としては、インテリアコーディネーター 、デザイン関係者、フラワーセラピスト、アロマセラピスト、アーティスト、医療ソーシャルワーカー、 看護師、作業療法士といったもので、どなたもどこかで医療福祉と関わることがあって、「恩返ししたい」「役に立ちたい」といった声を発していたのが印象的でした。


早速、持ち寄った企画の発表をしてもらいました。「春」「ひな祭り」「高齢者」といったテーマに沿うもので、場所は医療福祉センター名古屋市厚生院の講堂もしくは特別養護老人ホームの生活スペース等となります。
※ここまでのいきさつはレポート「第1回見学会」で詳しく知れます

デザイン関係者の方からは春やひな祭りに関する装飾の案が、フラワーセラピストやアロマセラピストの方からは生花や香りを使った案が、アーティストの方からはダンスや絵画鑑賞、医療関係者の方からは折り紙でひな人形を折るなどするメッセージカードや保育園児との交流といった案が出てきました。企画はホワイトボードにまとまっています。(画像参照)

ホワイトボードの記号の見方
・赤の[ ]→ 装飾系の提案
・黒の★→ ツール系の提案
・お花マーク→ 生花を利用する提案
・(香)マーク→ 生花もしくはアロマの香りを利用する提案
・(常設)マーク→ 施設に常設で施工する提案
・太い下線2本→ ダンスと絵画鑑賞というそれぞれ別軸の提案

いずれも内容や予算的には実現可能でしたが、時間やマンパワーの面から重複する案をまとめたり、厚生院さんに選んでもらったりしましょう、という話をしました。選べなかった案も、例えば来年や、別の施設等の機会にぜひ実現してみたいものです!
このような流れから、提案は4つにまとめました。

提案する企画は4つにまとまりました

1)あんどん・ぼんぼりの装飾

照明を組み込んだあんどんやぼんぼりを制作し、ひな祭りイベント時に飾りとして利用。その後もしばらくは、特養のフロアに設置してもらうなど活用してもらえる企画です。また厚生院の備品にしてもらえれば、来年以降も春に飾ってもらえる可能性があります。部品をそろえたら手作業で組み立てることになるので、受講生の皆さんで制作ワークショップをやりましょう! と話しました。
あんどんは床に設置(1mほどの高さ、蛍光灯を使う)、ぼんぼりは壁に設置(筒型またはちょうちん型、照明の方法は検討中)といったように設置方法などが違うので、どちらがよいか厚生院さんに選んでもらうことになりました。
<今後の検討事項>
・ぼんぼりは形や照明や壁掛け方法を要検討、あんどんの設置場所も確認
・和紙風の紙に印刷する花柄などのデザイン案
・見積もりと数量 など

2)コンテンポラリーダンスショー

認知症の方や介護度合いの高い方に向けては、見るだけでも楽しめるアートが有用だという意見が出ていました。スタッフを含めたすべての方に見てもらい、心身がいきいきとする楽しみや感動を届けたいといったコンセプトで、ダンスプログラムを提案することにしました。
ミラーニューロンという「他者の行動を見ているだけで、他者の行動と同等の脳内の活動が行われている」という人の共感に関わる脳のネットワークシステムがあるそうです(小野さん資料から)。感覚・感性に訴える、抽象度、身体性の高いコンテンポラリーダンスを若い女性に踊ってもらう案ですが、絵画や彫刻などの展示物と違い、ダンスとなると医療施設でなくとも普段から見られるものではありません。その点で外部からアート提案をする機会にはうってつけの内容と感じます。ダンスが分かるマネジメント人材がいなければ実現できないことだと思いました。
<今後の検討事項>
・公演の回数や時間、依頼料
・ダンスの衣装や内容、ステージとなる場所や設備 など

3)香りの体験

さまざまな五感を使って春を感じてほしいという思いから、フラワーセラピストの方やアロマセラピストの方から「香り」の提案がありました。具体的には(1)「食べても大丈夫!」というオーガニックローズ(食用バラ)を小部屋に閉じ込め、ドアを開けて中に入ってみると一気にバラの香りに満たされるというわくわく体験、(2)レモングラスの香りが前頭葉の血流量を増やすことで脳の活性化につながり認知症の改善に役立つという可能性があることから、今回のイベント空間内をレモングラスの精油で芳香する、などの案が出ました。
生花や精油の使用は、まず厚生院さんからどう受け止められるかの反応が気になるところですが、バラもレモングラスもリラックス効果、免疫力を上げる、集中力を高めるなどの効果が期待される理由とともに提案することになりました。
<検討事項>
・香りの強さや時間など

4)ひな祭り会の案内カード


ひな祭り会には参加される方とされない方がいるようだったので、参加される方には「参加のお誘い」という内容で、参加できない方には「メッセージカード」という内容で制作するプランでした。ひな人形を折り紙で折って貼った見本は、和柄でとてもかわいい。ここに職員や家族の方に手書きメッセージを依頼し、書いてもらうことで参加してもらうという案も。入所者の方には一人一人手渡しで。300床あるためカード作りはやや大変!? 「やり方次第で時間短縮できると思います!」と坂本さん。
<検討事項>
・どこまで手作りするか?
・メッセージの記入は可能か? など

効果測定の議論もありました

企画書フォーマットに「効果測定の方法」という項目を入れていました。前回、「念頭にはおきたいが難しいことも多い」という話がありつつも、皆さん効果測定について考えてきてくださいました。厚生院の場合、入所者の方ご自身がアンケートに記入したり質問に答えたりすることが難しいと想定されるので、スタッフ・家族向けのアンケートや聞き取り調査が現実的ではあります。その上で、可能性についても話し合いました。

残飯量が減る!?

香りの提案において。「ストレスが緩和されると食欲が増す傾向が見られ、イベント前日と当日の夕食の残飯量を計測する」という提案がありました。もし本当にアート導入で残飯量が減るのであれば画期的ですね! これはアート導入で入院期間が短くなり医療費の削減につながったという英国の事例と同レベルの効果と思います。もし具体的に計測できるのであればとても興味深いことだと思います。

唾液によるストレス評価法

ダンスショーの提案において。ストレスに対して分泌される唾液中の物質(例:アミラーゼ、コルチゾール)を測定することで、アンケート等に答えられない人に対してもその場で客観的な変化を観測できるそうです。医療従事者でなくとも簡単に唾液を採取し測定できるキットも販売されているとのこと。これも可能性を感じるものですが、看護師の方からは「患者に触れたり唾液を採取したりとなると、かなりハードルが高い」との意見が。

鑑賞者の表情やしぐさの変化などを分析する

ダンスショーの提案において。複数のビデオで定点観測した撮影記録から、さまざまな専門家(認知科学、脳神経学、精神科医、医師、看護学、心理学、芸術学、ダンサーなど)に分析を依頼するという案がありました。こちらも倫理面からすべての鑑賞者(本人もしくは家族)から撮影許可を取るなどという難しさはあり、今回の実現は……ですが、可能性を感じます!

他にも夜間のナースコールの減少を調べるなど、方法はいろいろとあるのだなと思いました。企画検討会でここまでの話し合いができて充実でした。そのため予定の2時間をオーバーし、21時過ぎまで話し合いが続いてしまったのですが……。近くのおいしい居酒屋で二次会も行い、さらに議論を続けたのでした。
いよいよ次回は、厚生院での企画プレゼンとなります。4つの提案をどのように厚生院に持っていくか、しばし事務局で議論し、参加者の皆さんに相談したいと思います。(寺井)