事務局からのお知らせ

事務局からの連絡事項、活動報告など

高齢者の医療福祉施設である名古屋市厚生院を対象に、アート活動を実際に行うワークショップ(WS)が始まりました。12月19日は、その前段としての企画WS。12月21日は実践WS第1回で、厚生院を訪れて施設見学やスタッフさんへのヒアリング、メンバーでの話し合いを行いました。

参加者は受講生(一般)8名、鈴木教授(講師)、高野さん(ファシリテーター)、事務局2名。
こうした見学や打ち合わせ等の日時は、施設の受け入れ態勢を考えるとどうしても平日昼間となり(土日は院内のスタッフ数が少なく対応しづらいそうです)、一般の方からどれほど参加してもらえるだろうかというのが懸念でしたが、一連の実践WSへの申込みは13名にのぼりました! アーティスト、インテリアコーディネーター、会社から業務の一環として参加される方、休暇を取って参加を希望する看護師など、それぞれ業務を調整されるそうです。参加者の関心度の高さは特筆すべきことと感じます。

受講生とともに施設内を見学

厚生院講堂で厚生院のスタッフの方々との顔合わせをし、早速院内の見学に移りました。見学中はスタッフさんが複数同行くださり、つど質問を受けてくださいました。

厚生院は、以下をもつ複合施設になっています。
○特別養護老人ホーム、3フロア、300床
○救護施設、80床
○附属病院(外来と入院)204床

おもにアートを導入するのは特別養護老人ホームの入所者の方々の生活スペースやイベントスペース(講堂)となります。そのため特養の見学に最も多くの時間を割きました。
見学では、フロアによって入所者の介護の必要な度合が違うことの説明があり、例えば2階と4階はベッドで食事の介助を必要としない方が多いことから広い食堂があること、3階はほぼ寝たきりの方が多いことから食堂はないことなどの説明がありました。2階と4階では車いすで移動される方も多く、見学日は入浴日だったので廊下で順番を待っている方がいましたが、3階は寝たまま入浴をされるため、頻繁にスタッフがストレッチャーで入浴する入所者を乗せて移動する様子が見られました。
300床あるため週4日かけて入所者が順番に入浴できるようにしており、木曜だけは入浴日ではないのでイベントは木曜にしているそうです。前日がクリスマス会だったそうで、フロアの入り口の掲示板にはイベントの様子がすでに写真で飾られていました。

気づいた点をポイントとしてまとめると…
・建物が築36年であるため全体的に老朽化が感じられる(塗装の剥がれ、天井が低いなど)
・特養は病院ではないため生花が許可されている
・部屋の入り口に目印になる名前やぬいぐるみがあり分かりやすさの配慮をしている
・車いすの人に配慮したカーテンなどの仕切り
・クリスマスなどの季節を感じられる飾りつけが随所にある
・開催されたイベントの様子の写真が廊下に貼られていた など

受講者は質問をしながら細かい工夫や設備の様子などを見学し、参加者それぞれの視点での気づきがあったようです。例えば床、扉、入り口の飾り、天井の高さ、窓からの景色、入所者の方々の目線の高さ、介助の必要な度合などについて……
病棟の見学と、救護フロアの見学もしました。


床の素材や状態にも目を配る

スタッフ手作りのクリスマスの飾りが数多く見られた

視察を終え、参加者同士で意見交換をする


講堂の場を借りて、視察を終えて感じたことやアート活動について話し合いました。
12月19日企画WSで話されたことを確認しつつ、実際に見学して分かったことを踏まえて自由に意見交換するなかで、「思いのほか入所者の方々の重症度が大きく、先日考えた参加型のアートというのは難しいと思った」「寝たきりの方は移動中も天井を見ていることが多いし、車椅子の方もどちらかというと下の方を見ていることが多いように思った」などの声が上がりました。
その方々に提案できるアート活動はどのようなことか? 具体的にしていくためにも、さらに厚生院スタッフさんに質問をしました。

質疑応答の結果は…
・ハンドマッサージやメイクなどの案もあったが難しそうであること
・足浴などの案があったが講堂では現実的ではなさそうであること
・フロアでの飾りつけについて、動線に当たらなければ可能であること
 ただし設置にとても時間がかかるとか、塗料のにおいがあるなどはよろしくないこと
・2月28日にはひな祭りイベントがあり、保育園児がAM中に1時間、3階フロアの方々と交流すること
 その保育園児と入所者の交流のきっかけを作るようなアイデアは十分検討可能であること
・ひな祭りイベントでは、午前と午後で合わせて4回、各1時間、交代で入所者の方が講堂に来る予定であること(そのうち1回が保育園児参加)


話し合いでメモされた内容

第2回に向けて、アイデアを具体化できる企画書の作成を

第2回に向けて、企画案を考える宿題をお願いしました。企画にあたっては、「アートの目的や効果」「対象者や人数」「効果測定の方法」「外部協力者の要・不要」「費用の目安」「準備スケジュール」といった項目も検討してもらえるよう、企画書のひな型を提示してみました。 話し合いで出た案、出なかった案にこだわらず、受講生それぞれが具体化できそうなことややりたいことを考えることにしました。

評価についてはどう実現したらよいのかといった話も出ました。鈴木教授からは「評価は重要だが、実際に取得するのは容易ではない」といったフォローもあり、意識として持っていたいことで共通認識にできたかと思います。少なくとも今回の場合は入所者さんにアンケート回答をお願いするのは困難と思われるので、スタッフやご家族にお願いしたり、他に入所者さんの思いを読み取れる方法があればという話をしました。


企画書のひな型を提示しました

ヘルスケア・アートの導入、そのマネジメントで目指すところは?

すでにホスピタルアートの経験がある受講生からは、「このプロジェクトでメンバーが目指すことをもっと共有しておくべきではないか」といった意見も出ました。その方の話では、「アートはすでに病院でも取り組んでいるし、病院スタッフでもできること。外部スタッフやアーティストが入ることの違いは何なのかとしばしば問われる」のだそうです。確かに厚生院でもクリスマスなどの飾りつけが豊富に取り組まれ、季節のイベントも定期的に行われています。その際にアートディレクターや専門家が入るメリットはどこにあるのでしょうか?

分かりやすいところでは「クオリティ」があると思います。評価とも関わってくることですが、日頃体験できないような質の高い本物のアートに触れることで、患者さん入所者さんに日頃得られない効果が起こるかもしれません。また専門の業者が入ることで、施設が使いやすくなる上に見栄えもよくなるとか、長持ちするとか、明らかに利便性もデザイン性もよくなることがあるかもしれません。
……これは私の個人的な考えに過ぎないのですが。
このプロジェクトも含め、経験を積み、明らかにしていけたらいいですね。

鈴木教授からは、「こうした形で一般の皆さんとヘルスケア・アートの導入WSに取り組むのは初めてのこと。手探りな部分もありますが、まずはやってみましょう」と激励の言葉がありました。

じつはこの見学会のあと、2名の受講生から忙しさや内容の難しさから参加辞退の申し入れがありました。実施期間が短いうえに取り組む内容が多く、一般の方を対象とする講座(WS)としては忙しく難易度の高いものになっていると認識しています。スケジュールに余裕がないのは反省点ですが、これも一つの機会、経験として、引き続きご参加いただく受講生の皆さんで進めていきたいところです。(寺井)