ガイドブックワークショップ 第3回開催しました
「ヘルスケアアート」のガイドブック化をめざすワークショップ。
5月29日(水)、6月5日(水)に続き、9月25日(水)に第3回目のワークショップが開催されました。
場所:名古屋市立大学ミッドタウン名駅サテライト JPタワー名古屋5階
出席:鈴木賢一先生(名古屋市立大学大学院芸術工学研究科教授)
・ファシリテーター: 小野さん(アーティスト)、高野さん(アーティスト)
・受講生: 池田さん、常盤さん、山崎さん、山名さん、佐藤さん
・事務局: 伊藤、寺井、森田、藤井
「あなたの思うヘルスケアアート」事例収集の振り返り
第2回目の6月5日(水)に、ワークショップの受講生の皆さんから「わたしの思うヘルスケアアートの事例」について発表いただきました。
集まった事例は、90余り。医療・福祉施設以外にも美術館や公園など、様々な場所にヘルスケアアートの要素を見出した発表が多くありました。
これら集まった事例を手掛かりに、6月14日(金)に開催された運営チーム会議にて、「ヘルスケアアートとは何か?」について議論・検討をしました。
議論の結果、皆さんから寄せていただくヘルスケアアートの事例としては、何らか心身に不調を抱えた状態の方が利用する医療福祉施設などの事例を扱うことにしました。
6月下旬には当事業のホームページ内に「あなたの思うヘルスケアアート」のコーナーを開設。
広く一般の方々からもヘルスケアアートの事例を投稿できるページを開設するとともに、いただいた事例はGoogle mapにピンをさして情報がマッピングされるよう見せ方にも工夫をしました。(https://healthcare-art.net/map/)
夏に開催したヘルスケア・アートマネジメントの連続講座の受講生の皆さんからも事例情報をお寄せいただき、現在は国内・国外のヘルスケアアートの67施設の情報が掲載されています。
第3回のワークショップでは、上記の経緯を振り返り、「ヘルスケアアートとは何か」について、あらためて皆さんとともに議論を行なうこととなりました。
ワークショップや連続講座受講生の皆さんから寄せていただいた情報の中から「なぜそれをヘルスケアアートと感じたのか」の部分の記述を抜き出して列挙してみると、ヘルスケアアートに関するたくさんのキーワードが抽出できました。
今回のワークショップでは、抽出されたこれらのキーワードを皆で見ながら、ガイドブックにおけるヘルスケアアートの定義、ガイドブックにはどんな情報を載せるべきか、について話し合いました。
ヘルスケアアートとは何か?に欠かせない条件とは?
複数の参加者からは「それを『ヘルスケアアート』と感じるかどうかは、受け手の感じ方による。受け手のその日の体調や気持ちによってもアートに対する受け止めは変わるのだから。ヘルスケアアートかどうかの境界はあいまいなもので、定義しようとすると対象がどんどん広がってしまう」という指摘がありました。ヘルスケアアートを定義する難しさについて様々に意見が出た中、 ひとりの参加者の方からは、こんなエピソードを話していただきました。
「私の知っている、ヘルスケアアートについて関心の深い病院での出来事です。ひとりのアーティストが『病院の待合室に飾ってくださいませんか』と自分の描いた絵画作品を持ってきました。その絵を見ると、どこか孤独感を感じさせるような絵でした。病院の先生は、アーティストに、その作品を描いた意図を尋ねました。するとその人は、『自分の表現したいことを描いた』と答えました。病院の先生は、その絵を待合室に置くことをお断りになり、代わりにさまざまな絵の飾られたギャラリーコーナーに飾りました。」
このエピソードから重要な指摘が出されました。「患者さんのため、あるいは家族や介護者のためにどんな意図をもってそれが作られたか」という【意図のある・なし】が、「それがヘルスケアアートとして存在できる要件」と関わりがある。アーティストが自己表現のために創った作品(アート)は、病院の中に置いても「ヘルスケアアート」とは言えないのではないか?という指摘です。
また、人の手の介在しない自然の美しさなどにも人は癒しや活力を感じることがありますが、「ヘルスケアアート」とは、人の手の介在したものであることも、存立の条件なのではないかという意見が出ました。(例えば自然を取り入れたビオトープや庭にも、設計者、施工者の意図と手が介在していれば、ヘルスケアアートとして存立し得る、というように)
療養環境の中には、必ずしも意図せず偶然に患者さんを癒すものもあるでしょう。また、ヘルスケアアートに患者さんが受ける影響や感じ方も受け手の数だけあります。しかし、【意図】をもって【人の手】により生み出されたもの、知識と技術のあるプロが介在して施されたものがヘルスケアアートだ、と考えたとき、ヘルスケアアートの送り手側の視点での輪郭がくっきり浮かび上がったように思われました。
ヘルスケア・アートマネジメントのガイドブックへの参加者の期待
ヘルスケア・アートマネジメントのガイドブックを編纂するにあたり、どんな情報があるとより役立ち、よりヘルスケアアートが日本に広がっていくだろうか?という視点で、皆さんに意見を出していただきました。
・「どうしてそのヘルスケアアートは生まれたのか?」事例の紹介の際に、どんな立場の人がどんなことをきっかけにしてヘルスケアアートが生まれたのか、その成り立ちを知りたい。
・病院で働く人や院内にいる人たちが小さな気づきレベルでも「ここにこんなヘルスケアアートが欲しい」と声を出しやすくなるような、後押ししてくれるガイドブックが欲しい
・作り手、受け手、その両者を結ぶ第三者=アートマネジメントできる人が必要。お互いをマッチングし、つなぐ役割がガイドブックで何かできないだろうか?
・受け手がヘルスケアアートに感じることのキーワードをマインドマップにまとめて、そのマップと具体的な事例を紐付して読めたら、ヘルスケアアートをつくるときに役立ちそう
…等々、たくさんの意見が出ました。
ヘルスケアアートは、多様なありかたの可能性がある、進化途上のもの。ガイドブックとしては、客観性・普遍性が求められますが、例えば、なごやヘルスケア・アートマネジメント推進事業の3年間の積み重ねをもとに我々が得た気づきや視点を「なごや宣言」としてガイドブックに込めるのはどうだろう?と鈴木先生からもアイデアをいただきました。
ヘルスケアアートのガイドブックは、来年度の完成を目指しています。
この記事をお読みになった方からも、ガイドブックについてご意見や参考情報などいただければありがたいです!
お気軽にお声をお寄せください。
(お問合せフォームをお使いください。 https://healthcare-art.net/contact/ )
(事務局 藤井)