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オンラインサミット2/20 第2部 ディスカッション&第3部 ヘルスケアアート宣言2022

「オンラインでもっと広がるヘルスケアアート」
2022年2月20日13:30-16:30 @zoom 参加無料・要申込


2021年度事業の最後に開催したサミットでは、全国の活動報告とディスカッションから、ヘルスケアアートの全国的な盛り上がりを確認し、これからさらに広げていくために「ヘルスケアアート宣言2022」を発表しました。この記事ではその後半、第2部ディスカッションと第3部「ヘルスケアアート宣言2022」をまとめています。
イベント告知ページコチラ
第1部実践発表の報告記事コチラ

第2部 ディスカッション



奥村伸二(みみはら在宅クリニック 所長、耳原総合病院 前院長)右上
岩田祐佳梨(NPO法人チア・アート 理事長、筑波大学 研究員)左下
室野愛子(耳原総合病院 チーフアートディレクター)右下 ※森口ゆたか氏の代理
鈴木賢一(名古屋市立大学大学院教授、なごやヘルスケア・アートマネジメント推進事業実行委員長)左上

森口ゆたか(美術家、近畿大学文芸学部文化デザイン学科教授、1999年 NPOアーツプロジェクト設立、2004年法人化)


鈴木先生:第1部の実践発表を終えて、発表された6人の方は目的や対象も違いますけれども、医療とアートがぶつかり合うと、こんなにも多様な側面が見えてくるのだとつくづく感じます。日本でたくさんの方々が医療とアートという接点で活躍されていることを、まず共有することが大事だと思って聞いていました。皆さんのご感想もお聞かせください。

奥村先生:鈴木先生と同じように感激しました。8年ほど前に設計段階からホスピタルアートを病院に導入し、当時は「東の順天堂、西の耳原」と勝手に言っていましたが、今やそんなこと言えないぐらい各地で広がっていて、本当にワクワクしながら聞いていました。最後の田中先生のご発表では、後継者のことまで話がおよび素晴らしいなと感激しています。


◎日本のヘルスケアアートにおける大学やNPOの役割


鈴木先生:田中先生のお話で、これから活躍される方の視点は本当に大事な気がします。岩田さんいかがでしょうか?

岩田さん日本のヘルスケアアートでは、大学が大きな役割を担ってきていると思います。たくさんの学生がいて色々なプロジェクトを実験的に実施できるほか、予算の関係もあるかもしれません。由井先生の発表でメリット・デメリットの話題がありましたように、学生側の学びと参画する病院職員にとってのプラスなど考えるべきことは多くありますが、次世代の育成など大学が担う役割を感じました。同時に大学だけでは難しい部分もあり、私もNPOを設立しましたが、外部との連携や協同について予算や継続性も含めて考えないといけない段階に入ってきていると改めて思います。

鈴木先生:日本では大学の担う役割が大きいという特徴があると、これはなぜなのですかね。

岩田さん:大学の公的で中立的な役割が病院にとっても警戒心なく受け入れられることが一つあるのかなと思います。

鈴木先生:なるほど。田中先生もNPOの準備をされているとのことでしたが、大学やNPOのように非営利の団体が担う役割があるのですね。室野さんはNPOの活動もやられていますが、ヘルスケアアートを担う主体として、NPOの役割をどう考えますか?

室野さん:豊中市の加藤さんのご発表を、豊中市民の一人として驚きながら聞いていました。行政の色々な制度や取り組みをいかに市民に伝えていくかは課題であると感じていて、その中でアートの力が活用できると思うのですが、NPOのような組織が入ることによってより広がって行くように思うので、NPOの力はこれからもっと必要になるのではないでしょうか。

鈴木先生:大学の力についてはどうお感じになりますか?

室野さん大学の場合、現場の感性と若者の感性がぶつかり合いながら制作をしていくところが魅力的だと思います。私たちはアートディレクターとして適切だと思うアーティストを紹介するのですが、由井先生が発表されたHAPii+プロジェクトのように、多くの案の中から選べるのは、医療者側も自分の感性を働かせながら決めていけるのですごくいいと感じます。

鈴木先生:学生の場合は一生懸命に考えながら提案することが、医療スタッフの皆さんにとって逆に嬉しくなるというか。

室野さん:そうですね。学生にとっても、患者さんや職員やその環境を考えながら作り込んでいくプロセスはとてもよい経験になると思います。

鈴木先生:奥村先生は病院長のときに、病院内に異なる風を入れたいと、異分野の方をお招きして勉強会をされていましたが、病院という閉ざされた人間関係、空間の中に、外の人が入ってコミュニケーションをとることについて、どうお感じになりますか?

奥村先生:私が医者になった36年前は患者さんの平均在院日数は約1ヶ月だったのですが、私が病院長になった当時は約7日と、患者さんに一度も会わない病棟のスタッフがいるような状況になりました。それと高齢者の方と若い方とは、例えば「女学校」という言葉一つでもギャップがあって、話が合わないことがあるんですね。そうした中で私は、職員に患者さん個人個人の人生をリスペクトして、楽しんでその患者さんを診るという視点を持ってほしいと「異文化コミュニケーション」を始めました
大学の話題について、大学はコストパフォーマンスを企業ほどシビアに求められないので、大学がこの分野を先行し、広がる下地になっているのではと、森口先生と話をして思っていました。本当は大学以外でもどんどん発展すればいいなと思います。


◎全国的なネットワークや情報交換の場を


鈴木先生:ありがとうございます。大学やNPO、それから個人でされている方もいらっしゃいますし、そして今日参加の皆さんの中には、まだやったことがないけれどチャンスがあればという思いのある方もいらっしゃる気がします。
これだけ多様な方々が、各地で取り組んでいる状況の中で、もう少し一体感を持って情報交換をしたり刺激しあったりできないかなと、サミットという形で皆さんのお話を聞いていますが、全体で盛り上げていくための方策をアドバイス頂けたらと思いますが、岩田さんどうでしょうか?

岩田さん: 1990年以降にヘルスケアとアートの分野で発足した活動をまとめたことがあるのですが、先ほど言ったように大学を中心とする教育機関が1990年頃から2000年代にかけて発足し、同時にNPOも含めた法人や個人あるいは任意団体も立ち上げられてきました。そういう中で、2010年ごろから医療機関の中にディレクターやコーディネーター、アーティストが入り、そこが主体となって医療分野でのアートを進めていく流れがだんだんと活発になっているように思います。そうした団体や個人がよりお互いの活動を知り、連携して、例えば活動の質をどう高めていくかとか、継続して行くための方法や、予算の獲得などを議論していけるようなネットワークや仕組みを作りたいと思っています。

鈴木先生:岩田さんのまとめによると、2000年あたりから色々な試みが立ち上がってきて、20年ほどで主体も対象も多様になっていて、そういう意味では議論ができる下地はできている気がします。そうなると皆さんで一緒に議論できる、つながれる場所を年1回でもネット上ででも、上手に作ることを考えてみたいと思いますが、室野さんどうですか。

室野さん:私も数年前から全国で各々が行っている取り組みが集まって、ギルドみたいになったらいいなと思っていたところに、鈴木先生が今回集めてくださったのはすごく感謝をしています。袋田病院さんも前から素敵だなと興味を持ちながら、まだお話を聞いたことがなかったので、このような場が大きなきっかけになると思っています。

鈴木先生:ギルドとはどのようなイメージですか?

室野さん各地に点在する専門職が所属を超えて集まって、情報交換や働きかけをする全国的なネットワークのイメージです。グループとして行政などに発信できたら強いなと。

鈴木先生:今日、豊中市の加藤さんに登壇いただいたのは本当に意味があると思っています。病院だけじゃなくて生活の場を気持ちの良い場所にしようという試み、まちづくり全般がヘルスケアアートで豊かに彩られるというか、芸術作品でというよりアート的な発想でまちがつくられる、アート的な発想で人々が動くような側面があるといいなと思います。
たまたまコロナでオンラインになったことで、全国の皆さんとこうしてつながれるようになったのは、一つのタイミングなのかなという気もしています。


第3部 ヘルスケアアート宣言2022



鈴木先生:昨年度2020年度には3年間の事業の最後に「ヘルスケアートなごや宣言2020」を作りました。この新たな活動を風に見立て、日本中に新しい風が吹いてくるといいな、という思いを書いたもので、新沢としひこさんに作詞作曲いただき歌にもなりました。
<ヘルスケアアートの歌ができました! https://healthcare-art.net/news/notice/entry-196.html
そして今日は「ヘルスケアート宣言2022」をみなさんで共有して、この宣言を一つのきっかけにしてつながってみませんかというご提案です。


ヘルスケアート宣言2022
健康で持続可能な社会と人々のウェルビーイングを目指し、
アートを活用しようとする熱い想いと小さな実践の価値をお互いに認め合い、
ともに大きなうねりを生み出しましょう。

鈴木先生:この宣言は、森口先生や岩田さん、阿部先生、篠原さんたちと相談しながらまとめました。皆さんどうお感じになるでしょうか?ご感想も聞かせていただきたいと思いますが、一緒に作り上げていただいた岩田さん、これに込めた想いをお話いただけますか?

岩田さん:今日の発表でも各地で草の根的に積み重ねられている実践をうかがいましたが、各団体でヘルスケアアートやホスピタルアートなど呼び方の違いや、主義や内容の違いもあると思います。でもそうした違いがありながらも、先ずは皆さんとつながって、協力していくことが、次の段階に行くために必要なんじゃないかと、検討を重ねて思いを込めて言葉を決めました。


◎サミット参加者からの賛同のコメント


鈴木先生:岩田さん、ありがとうございます。すでに賛同していただいている方がサミットの参加者にもいらっしゃるので、一言いただきたいと思います。札幌の定廣先生、ご無沙汰しています。

定廣先生:札幌市立大学看護学部に勤めている看護師です。医療者がアーティストやアートディレクターになれるといいなと思っています。患者さんや利用者の反応など、看護学や医療者側の知識を共有できると、効果の検証にもつながるような手ごたえを感じています。看護師をはじめ医療者はどうしても自然科学の知識で頭でっかちになってしまうところがあるので、アーティストの皆さんやアートの世界を大事にされる皆さんとより多くの医療者が繋がれる日が来るように、小さな活動で良いので続けていきたいと思いました。

鈴木先生:ありがとうございます。数年前に札幌でお話を聞いたことを思い出しました。建築家の室殿さん、おみえになりますか?

室殿さん:鈴木先生にアートの企画から制作をしていただいた富山県リハビリテーション病院子ども支援センターで、私は設計担当をしましたが、この時も重度なケアが必要な子どもたちだけじゃなく、ご家族にも場を作れたと非常に喜ばれています。このヘルスケアートの必要性を皆さんと協力し検証してエビデンスを確認していけるよう、この宣言に賛同します。ヘルスケアアートは心のワクチンだと思っています。

鈴木先生:室殿さんぜひよろしくお願いいたします。次は学生の浅野さんお願いします。

浅野さん:京都芸術大学の1回生です。ヘルスケアアート宣言に賛同します。私はHAPii+プロジェクトの一員として活動しています。本日は全国のさまざまな場所や機関で活動が行われていることを知り、新しい考え方や取り組み方を学ぶことができました。これからもHAPii+プロジェクトで、学生としての視点もバランスよく取り入れながら活かして行きたいと思います。ありがとうございました。

鈴木先生:学生さんへの期待はすごく大きいですので頑張ってください。続きまして、山口の鈴木啓二朗さんいらっしゃいますか。

鈴木さん:山口で現代美術をやっています。宣言に賛同いたします。ホスピタルアートはまだ経験がないですが、今後機会があれば積極的にやっていきたいです。周知して行くことのほか、行政とか病院、アートディレクター、アーティスト、地域の人との連携がすごく大事だと思います。同時に自分の地域の特徴を地域の人たちと理解して、やれることを少しずつやっていくことが大事だなと。時間をかけて、ゆっくりと成長させていく姿勢を学びました。

鈴木先生:やっぱりまだ知らない方も沢山いますので、啓蒙活動もどんどん行っていきたいと思います。最後に、タイのジェイさんいらっしゃいますか。

ジェイさん:ヘルスケアアートが患者さんの支えになると信じています。と言うのも、私自身ががんの治療中にヘルスケアアートのプロジェクトに参加し、病気にばかり集中するのをやめて、想像力を働かせて創造活動をしました。それは患者にとって大切なことだと思います。私は、タイの血液のがん患者を支援するグループのキャラクターを作ったほか、今まで2年近く小児白血病などの患者さんのために、募金活動や骨髄ドナーの支援を行っています。いつかタイと日本でコラボレーションできると嬉しいです。

鈴木先生:ご自身が患者さんとして完全に対して非常に大事だということで今回ご参加いただきました。日本だけじゃなくて世界にも広げて行けるといいなと思います。
さて。最後に、このサミットの参加者で賛同していただけう方はぜひ顔を出して頂いて、賛同の意を示していただけますでしょうか。zoomのリアクションボタンでの賛同でも構いません。
皆さんどうもありがとうございました。


ヘルスケアアート宣言2022に賛同いただいた皆さん


「ヘルスケアアート宣言2022」賛同のお礼とご報告


「ヘルスケアアート宣言2022」について、2月末までオンラインで賛同の受付をしましたところ、計146人の方からご賛同をいただきました。
サミット告知ページの最下部で、賛同者数やエリア、ご職業、メッセージ等を紹介しています。活動拠点の住所を入力された方はGoogle Mapにプロットし、全国的な広がりを感じられるようにしました。短い期間での募集でしたが、多くの方にご賛同いただき、感謝いたします。ありがとうございました。

サミット告知ページ
https://healthcare-art.net/event2022/


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