事務局からのお知らせ

事務局からの連絡事項、活動報告など


関西大学高槻ミューズキャンパスおよび耳原総合病院で12月6日(木)に開催された
講演会を拝聴してきました。事務局の伊藤が印象に残ったものをレポートいたします。

「Art for Health in the UK 英国におけるホスピタルアートの展開」

講師 クライブ・パーキンソン氏
(マンチェスター・メトロポリタン大学 アート・フォー・ヘルス部門長)

昼の部は関西大学大学院社会安全研究科のPDM(英語による博士課程)設立を記念するセミナーとして、
夕方の部は耳原総合病院にて関西大学と堺市の連携事業として開催されました。
昼の部も夕方の部も、関西大学社会安全研究科の亀井克之教授がコーディネートをされ、
夕方の部は、近畿大学の森口ゆたか教授や、耳原総合病院の奥村伸二病院長もご登場され、
充実した講演会となりました。

関西大学での講義はまさかの通訳なしの英語のみの講義で、
英語力のない私は、通訳有の夕方の部(@耳原総合病院)までお邪魔して、
次のような話を聞いてきました。
(聞いた話を意訳しているので、パーキンソンさんの話そのままではありません)

「Designing Future Society for Our Lives」

講義スライドの表紙には、「Designing Future Society for Our Lives」。
直訳すれば「私たちの暮らしのための未来社会のデザイン」でしょうか。

パーキンソンさんの幼いころ、認知症だった祖母との思い出に始まり、
英国の「Arts for Health」というチャリティ組織についての話のほか、
英国での具体的なアート活動の例を教えてくださいました。

アート活動例

  • ・重い病を持つ子どもに、生演奏などの音楽体験をプレゼントすると、
  • 子どもたちは自然とリズムに合わせて体をゆらし全身で音楽を楽しんでいた。
  • その時間、子どもたちははいっときだけでも痛みを少し忘れ、充実した喜びの中にある。
  • ・重篤患者のある少女はアーティストとともに、自分の心音をつかったアート作品を作り上げた。
  • 作品が完成したとき彼女は既に亡くなっていたけれど、彼女の心音をつかったアートは
  • 帝都ギャラリーで展示もされ、作品を介して娘と対峙した母親は満ち足りた表情をしていた。
  • ・とある認知症の高齢女性がいて、普段は叫び這い寝転がるような行動をとる彼女が、
  • ある作品をじっくりと手や額で撫でまわしながら鑑賞したのち、それを「とても美しい」と言った。
  • 彼女は言葉や心を無くしたわけではないことが、はっきりと分かるできごとだった。
  • ・ホームレスの男性にゆっくりと時間をかけて話を聞くと、彼は詩や愛について、
  • 豊かに語った。

「Our Lives」を豊かにするアート

パーキンソンさんの英語の講義後に、関西大学の亀井教授が、
簡潔な要約とともに、
「英国のホスピタルアートは、壁に絵を飾るなんていうレベルは脱し、
音楽はもちろんサウンドを使ったアートまで、広く展開している。」
とお話しくださったように、
ただ環境や空間として、鑑賞する対象としてアートがあるだけでなく、
患者自身が表現するコンセプチュアルな作品にまでなっていました。

近畿大学の森口先生は、
「アートがすべてを解決する、ミラクルを起こすということではありません。
でも、重症の患者もホームレスも、アートだからこそ表現できるものがあり、
医療のできない部分をアートが可能にすることがある」と、
補足解説をしてくださいました。

それは、よくこうした活動で求められる「エビデンス」のように、
定量的な分かりやすい結果ではないのかもしれませんが、
確実に「Our Lives」を豊かにしています。

耳原総合病院での講演会に参加された方からは、
「作品、アートがあることで、患者が感情や情動を表現しやすくなり、
それは医療行為だけでは抜け落ちてしまう部分かもしれない」との声もあり、
なるほどと感じ入りました。

夕方の部の最後に亀井教授から、
「危機管理やマネジメントの分野でも"感性"が重視されていきてる」とのお話も聞き、
AIが飛躍的に活躍の場を広げる中、アートは多くの分野で必要とされるものなのだと
改めて思いました。

アートを取り入れる積極的なしくみを持つ英国

具体的なアートの事例だけではなく、
英国は国としてホスピタルアートを積極的に取り入れるしくみがあり、
格段に日本よりも進んでいる英国の状況のお話もうかがいました。

英国ではホスピタルアートの支援やコーディネートをしている組織が各地域にあり、
さらにその各地の取りまとめの組織が集まり、
医療環境の改善を全党派でやるべきと、政府へのはたらきかけ
超党派の議員グループが、アートの影響についてエビデンスを集め
「Creative-Health : the-Arts-for-Health-and-Wellbeing」として、
詳細なレポートを公表していいるそうです。
今年の 6月23日に開催した、
なごやヘルスケア・アートマネジメント推進事業のキックオフシンポジウムでも、
高野さんが「英国のチャリティ組織の役割」と題してお話をしてくださいましたが、
英国はアート活動の具体的内容だけでなく、社会の体制も格段に進んでいますね。

耳原総合病院のホスピタルアートのfacebookページでは、下記のキーメッセージを紹介されていました。

Creative Health:The Arts for Health and Wellbeing.
【key Messages】

  • ・The arts can help keep us well,aid our recovery and support longer better lived.
  • ・The arts can help meet major challengers facing health
  • and social care:ageing,long-term conditions,loneliness and
  • mental health.
  • ・The arts can help save money in the health service and social care.

(「Creative-Health : the-Arts-for-Health-and-Wellbeing」の詳細レポートは下記URLから)
http://www.artsandhealth.ie/wp-content/uploads/2017/07/Creative_Health_Inquiry_Report_2017.pdf

この冬に、私たちも高齢者福祉施設にアートワークを導入するワークショップを予定しているので、
そのアートワークを考える際に、今回の講義で聞いたお話を参考にしたいと思うと同時に、
日本でホスピタルアート、ヘルスケアアートを広めていくにはどうすればよいのか、
どういう体制や組織がありえるのかなどを、
自分自身、もっと勉強して考えて行きたいと思いました。

この度は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございました!