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連続講座第7回「美術大学におけるヒーリングアートの研究と実践」

女子美術大学 芸術学部アート・デザイン表現学科 ヒーリング表現領域教授 山野雅之先生


8月29日(木)18:30より、連続講座第7回「美術大学におけるヒーリングアートの研究と実践」が行なわれました。今年度連続講座の最終回となる今回は、女子美術大学芸術学部教授の山野雅之先生に講師を務めていただきました。

山野先生は、1992年より病院におけるヒーリングアート導入プロジェクトに取り組んでおられます。これまでに約50か所の医療・福祉施設において、学生とともにアートの共同制作を行なってこられました。
共同制作の重要な点は、アートを施行する側の一方向の視点による制作ではなく、医療スタッフや患者とのコミュニケーションを重ね、ブレストして共同してつくりあげるところにあるそうです。
学生同士のブレインストーミングにより生まれた企画は、医療関係者との合意を形成するまでにプレゼンや手直しを繰り返し、指定色のオリジナル調合など、たくさんの工程を経て完成します。先生の27年間の取り組みの間に、最初は直接壁に描いていた工程を、耐久性のあるシートに原画をデジタル印刷して貼る、大判の布に印刷して交換できる壁装飾の施工をするなど、その工程も様々に進化をみせました。その道筋を数多くの事例とともにご紹介いただきました。

山野先生のヒーリングアートのプロジェクトでは、施行後にアンケート調査や現場でのエピソード収集を行なっていらっしゃいます。これまでに収集されたアンケートは、なんと3500人分にもなるそうです。アンケートデータの蓄積、それぞれの現場での後日譚(エピソード・生の声)収集の蓄積が、プロジェクトの進化のもとでもあります。

山野先生からは、近年の医学、脳科学、AI技術等、様々な分野の発展により、療養環境におけるアートが患者さんにもたらす効果=エビデンスを測定できる手段が拡がりつつあるとの示唆がありました。今回連続講師としてお話を伺った山野先生をはじめとした先達者の先生方の長年の取り組みを礎に、さらにヘルスケアアートの将来に新しい地平が開けていることを感じさせていただいた、連続講座最終回となりました。

6月29日開催のキックオフ講座を皮切りに、全7回の連続講座の講師を務めていただいた計9名の先生方、どうもありがとうございました。
(藤井)


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