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札幌視察に行きました(2) 五陵会病院「風の家」/びょういんあーとぷろじぇくと事例

引き続き、札幌視察のレポートです。2日目の午前、五陵会病院の「風の家」を見学に行きました。私たちが札幌を訪れた時はたまたま天候が安定していたのですが、それでも道路には積もった雪があります。札幌駅周辺の積雪は少ないのですが、1日目に訪れた桑園など、一駅離れただけでもぐっと雪が増えるのには驚きました。五陵会病院は「篠路」という郊外の駅から1.2kmの距離にあり、タクシーがつかまらず雪国の生活を想像しながら住宅街を歩きました。


札幌市郊外、タクシーはすぐには来てくれませんでした


五陵会病院「風の家」の見学と院内視察

五陵会病院は精神科を中心とした心の病気を抱える方を支援するところで、外来、入院、社会復帰への支援まで連続してサポートする病院です。「風の家」が設置されているのは外来と入院棟をつなぐ廊下のさりげないくぼんだ空間でした。もとはマカロン広場という名の談話スペースで、カラフルなソファーだけがあったそうです。
五陵会病院はプロジェクト1年目に「風の家」のパンフレットを見て「ぜひ導入したい」と返答した病院で、その年は五陵会病院だけに設置して空間的療養効果を検証しています。現在は2年ほどたちスタッフから「やや使用感はあります」とコメントがありました。案内で訪れた時も2名の患者さんが「風の家」を利用していました。


不織布で視線をやんわりさえぎられるのが、精神科の患者さんには居心地の良さにつながった


実際に訪れてみると、この場所のために設計されたアートではないのにとても馴染んでいました。黒いフレームは重そうに見えて案外そうでもないと感じました。確かにただソファーがある状態より利用しやすそうです。 ※詳しい調査結果は(1)で紹介しました定廣先生の研究レポートをご覧ください。

病院によって布を短くしたり、動線にかかるなどで配置を考えたり、数を変えたり、例えば壁に絵画があればその位置とセンターを合わせたりといったさまざまなアレンジを山田先生が判断され、最適化しているそうです。


吊り下げ方などは山田先生が現地を見て判断


入院棟も見学させていただきましたが、ハッと目を見張る美しい空間でした。廊下にさりげなく光や緑を取り入れるスリット窓があり、階段室のガラス窓からも自然光が降り注ぎ、デイルームは中庭に面してカーブを描いていました。


白を基調とした美しい病院でした


「びょういんあーとぷろじぇくと」日野間さんと、ブルース・ダーリング氏

正午に札幌駅に戻り、美術家でありホスピタルアートに取り組んでおられる日野間尋子さんと、美術史家でありアートミーツケア学会理事であるブルース・ダーリング先生にお会いしました。
日野間さんはもともとドイツやオーストラリアで制作活動をされていた際、病院アートの取り組みに出会ったそうです。日本に戻られて2008年に「びょういんあーとぷろじぇくと」という任意団体を設立し、さまざまな作家による病院での作品展示に取り組んでこられました。現在も札幌ライラック病院で毎年展示を行い、富良野市内の障害者支援施設での創作支援を継続的に取り組まれています。ブルース・ダーリング先生は老人施設の環境とアートに詳しく、この日は英国発祥の、おもにがん患者が安心して過ごすためのマギーズセンターについてさまざま教えてくださいました。

札幌大通地下ギャラリー500m美術館に立ち寄りながら、実際に札幌ライラック病院を訪問させていただきました。現在は大きな展示イベントはしていないということでしたが、常設となっているいくつかの展示や、展示されていた名残をお伺いしました。ソーシャルワーカーの髙田さんが案内くださいました。

札幌ライラック病院の院内視察


札幌駅から地下鉄でほど近いところにあります


エントランスには装飾がまだ残されていました


よく見ると釘で打ちつけられ、過去に打たれた釘のあともたくさん


日野間さんが創作支援に関わっている作品を飾っている


ライラック病院を訪れて、ムービーや写真で見せていただいた過去の展示風景が院内のどこであったか、どのように行われたかの解説を実際にしていただきました。常設のようになっている展示も思ったより数多くあり、決して新しい病院ではないことや病院の理解もあって、釘を打つなどが自由にできている様子を確認できました。


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