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札幌視察に行きました(1) 札幌市立大学の研究報告/渓仁会リハ病院の見学

アートミーツケア学会で札幌市立大学看護学部にいらっしゃる定廣先生の発表を聴いた際、ヘルスケアアートの実践に役立つアイディアがふつふつとわきました。札幌視察の計画を立てることになり、定廣先生から札幌の病院やプロジェクトをお伺いすることもでき、2日間でみっちり、さまざまな事例を視察できました。2回に分けてレポートします。

札幌渓仁会リハビリテーション病院、ロビー空間における「三人展」

札幌に到着して最初に訪れたのは、JR札幌駅から1駅「桑園」にある札幌渓仁会リハビリテーション病院。2017年6月に開院したばかりで、同日取材する札幌市立大学デザイン学部の山田良先生が空間づくりやサイン計画に関わっています。


天井に設置された吊り下げ用の装置に注目! 家具もこだわり。展示は山田先生の研究室の学生さんが制作。


2階の作業療法の部屋からもロビー空間のアートが間近に見られた


札幌市立大学デザイン研究科の女子学生さんによる力作による「三人展」


意図された木目調のスッキリした空間づくり


開院時に設置された山田先生の作品。2017年:《桑園ヴィレッジ》(札幌リハビリテーション病院、札幌市)


学生さんの「三人展」が開かれていたロビー空間。病院の中でこれほど意欲的なアートやそれを可能にする空間を取り入れたところは数少ないのではないでしょうか。ここには何と天井に舞台装置で見られるような展示用フレームが据え付けられており、開院当時は山田先生の「桑園ヴィレッジ」という作品が飾られていました(病院ブログ)。ガラス張りになっているのは近隣の桑園という町と病院が一続きの空間になっている様子をイメージされたそうです。実際にガラス戸をあけて地域のイベント時に利用されたこともあるとか。

山田先生からは、作品が重くなりすぎないこと、見た目からも重厚感を与えないようにすること、実際に子どもに揺らさせて落下等の問題がないか確認することなど、配慮している点を伺いました。北海道胆振東部地震(2018年9月)が実際に起こりましたが作品が落ちるようなことはなく、じつは吊り下げられた作品というのは案外ゆらゆらと揺れることで揺れや衝撃が伝わりにくく、それよりも展示用フレームの方が剛性があるのでポキッと折れてしまわないか心配されたそうです。

桑園ヴィレッジの試みは動画でも見ることができます!
Installation art work: Soen Village / Sapporo Keijinkai Rehabilitation Hospital

地域連携室の成田さんに院内の案内もいただき、リハビリ期に特化した病院の様子を具体的に見学させていただきました。

札幌市立大学 芸術の森キャンパスにて、定廣先生と山田先生に面会

JR札幌駅から地下鉄とタクシーを利用して、札幌市立大学の芸術の森キャンパスを訪れました。デザイン学部と研究科があり、キャンパスの敷地も建築も個性的です! 札幌市立大学の理念であるデザインと看護の連携活動として実施されている「D×N(Design and Nursing)Art in Hospital プロジェクト」の取り組み、山田先生の作品「風の家」を詳しくお聞きしたく、定廣和香子教授(看護学部)と山田良准教授(デザイン学部)にお会いしました。

プロジェクトの概要は、アートミーツケア学会のオンラインジャーナル第9号からPDFをダウンロードできます。[研究ノート]空間的療養効果を重視したArt in Hospital 風の家 《Breathing House》(PDF


「風の家」を病院に紹介するパンフレットが作成された


山田先生の作品例。2014 年:Sprouting Garden /萌ゆる森《AirGarden /空の枯山水》(札幌芸術の森美術館、北海道札幌市)


このプロジェクトは定廣先生によって企画や効果の研究活動が進められていますが、空間インスタレーションのデザインや制作は一貫して山田先生が行なっています。山田先生は建築家でありながら環境芸術の分野において国際的に評価を受けているアーティストでもあるため、既存の病院空間において法規や安全性を確認しながら環境と人の接点を生み出すことに長けており、定廣先生は山田先生のお考えを尊重し、咀嚼し、信頼してプロジェクトに反映されていることが分かりました。

先に病院に最適な空間インスタレーションを考案し、パンフレットにまとめたもので病院に提案して「設置を希望する病院に置きたい」と考えた山田先生のアイディアを、最初は「どこもやりたいと言わなかったらどうしようか」と戸惑いながらも定廣先生が受け入れられたこと、「風の家」の設置が決まった病院には早々に山田先生が連絡を取って自ら設置に出向かれた話、改良を加えた話、ある一つの病院だけは設置希望をいただきながらもメンテナンスの困難さからお断りせざる得なかった話、病院関係者さんから「これは何ですか?」と聞かれ「アートです」と答えると、「ア、アートですか?」と戸惑われるような会話がユニークでそれだけでいいのではないかと感じる話など……。たくさんのお話を気さくにお話くださり、本当にありがとうございました。

定廣先生から「ぜひ実物を見ていただきたい、写真と実物では違います!」とお伺いし、その場で急ぎ、現在も展示があって対応いただけそうな五陵会病院に連絡を取りました。


ちょうど学生さんの卒業制作がキャンパス内の至る所に展示されており、選んだ展示場所でプレゼンもするのだそうです


緩和ケアとホスピタルアートについて 市立札幌病院の小田先生と会食

JR札幌駅に戻り、定廣先生のご紹介でお会いすることになった市立札幌病院緩和ケア内科 副医長をされている小田浩之先生と会食させていただきました。

「小田先生は一級建築士でもいらっしゃったはず」と定廣先生から伺ったことを確認すると、確かにそうでありビックリ。なんと東京大学工学部都市工学科で建築まちづくりを学ばれていて、その後は一度まちづくりの道に進みながらも医学部に入り直して医者になられたそうです。しかも驚いたのは、今再び建築計画研究室の学生として緩和ケア病棟の計画技法の研究に取組まれているのだそうです! 北大の獣医学部に在籍する私の知人も合流し、緩和ケアのさまざまな取り組み、ホスピタルアートに関心を持たれたお話、人体と建築の接点などを興味深く聞かせていただきました。(寺井)


連れていっていただいたジビエ料理店は見た目も味も個性的でおいしかったです


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