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高齢者のヘルスケアアート事例紹介WS 第2回開催

病院や福祉施設などで実施されている高齢者のためのヘルスケアアートの事例を集めて、事例集サイトに掲載する事業、第2回目を実施しました。

第1回目レポートはこちら


1.第2回の実施概要


日時:10月27日(水)19時~21時
場所:オンライン(zoom)
講師:鈴木 賢一(名古屋市立大学大学院 芸術工学研究科 教授)
参加者:12名
運営:高野、伊藤、寺井(書記)

ワークショップの第2回~第4回では、3回にわたって、高齢者を対象としたヘルスケアアート事例を発表し、話し合います。受講生には事例の収集に取り組んでもらい、資料を画面共有しながら、この日はまず5人に発表してもらいました。持ち時間はそれぞれ20分(10分発表、10分で意見交換)としました。


2.受講生による発表「高齢者のヘルスケアアート事例発表1」


(1)佐野さんの発表


社会福祉法人賛育会にてアートディレクターとして活躍される佐野さんにトップバッターをお願いしました。佐野さんご自身が取り組まれている事例のご発表で、同法人の第二清風園という特別養護老人ホームにおける「看取り」に特化した、「看取りケアをアート視点でとらえプランニングし実施する」という内容でした。

具体的な実施内容は、「写真家として活躍された方の居室で個展を開催」「お茶の時間と甘いものが大好きだった方の居室で、長年の親友のぬいぐるみが代わりにお茶会を開いて見守った」「おしゃれで帽子が大好きだった方の居室で、大好きな帽子に囲まれて幸せを感じてもらえるようにした」など。


佐野さんより紹介
看取り期に入った入居者の人生を可能な限りよく聞き取り、その人固有の人生としてとらえた上で、彼(彼女)が大切にしてきたこと、物、人との絆をキーワードに、スタッフの五感と創意工夫=アート感覚を通して看取りケアプランを策定し、実践。

ケアプランを作成する際には、目・耳・におい・味・触感といった五感に訴えかけることを意識されているそうです。プロジェクトのメンバー構成や、佐野さんがどの部分に関わっているのかや、なぜこうした取り組みが始まったのか、といった質疑応答がありました。


(2)Sさんの発表


Sさんはご自身が演劇やコンテンポラリーダンス、コミュニティダンス等に強く関心をもっていることから、舞台芸術に関する事例を集めてくださいました。

1つめは砂連尾 理さん(じゃれおおさむ/振付家・ダンサー)のご紹介。著書に『老人ホームで生まれた〈とつとつダンス〉―ダンスのような、介護のような―』(晶文社)があります。高齢者施設で認知症のある人を含む高齢者たちとワークショップを重ね、ダンス公演もしたという取り組みで、砂連尾さんはその後も高齢者や妊婦や子どもとのダンスワークショップを(コロナ禍以降はオンラインでも)されているそうです。Sさんは、砂連尾さんが福祉をしようと思っているわけではなく「身体や動きへの興味から関わっている」こと、「芸術的な探求心で高齢者に接することで、施設スタッフとは違う関わり方ができ、高齢者やスタッフの身体がほぐれ、内面も変化していく」ことから、事例紹介に選んでくださいました。


砂連尾 理 HP
https://www.jareo-osamu.com/

2つめは、ダンサー安藤洋子さんが、神奈川県在住・在勤の60歳以上の方にダンスレッスンをおこなう「シニアのためのダンス表現プロジェクト」。これは神奈川県が実施している「共生共創事業」というもので、年齢や障がいなどにかかわらず、子どもから大人まで全ての人が、舞台芸術に参加し楽しめることを目的としています。この「シニアダンス企画」(チャレンジ・オブ・ザ・シルバー)では、毎月のオンラインレッスンをへて作品発表もされているとのこと。


かながわシニア創作創造プロジェクト
https://kyosei-kyoso.jp/project/

3つめは、イングリッシュ・ナショナル・バレエ(English National Ballet)の、「パーキンソン病の人のためのダンスレッスン(Dance for Parkinson's Class)」というシリーズもののYouTube動画。コロナ禍で制作し無料で公開していて、パーキンソン病の人や無理なくゆったり体を動かしたい人向けに、ダンスを通して体を動かすことができる内容になっています。ごく簡単な動作でもダンスしているように仕上げています。


Dance for Parkinson's Class #1 | English National Ballet
https://www.youtube.com/watch?v=yxJXMcscpdk

YouTube「Dance for Parkinson's Class #1 | English National Ballet」より画像キャプチャ


4つめは、ひとことで書くと、高齢者の施設での暮らしを疑似体験できる、という内容でした。2019年に英国・ロンドンで初演されたイマーシブシアター(没入型演劇)『The Home』が、コロナ禍によって日本で公演できなかったことから、日英合作のオンライン版として再構築されて、老人ホームでの「介護される暮らし」を疑似体験できるオンライン作品となって無料公開されている、というものです。そこでどんな悩みや問題があるか、立場を変えてバーチャルに体験できるのかもしれません。(アプリ版とウェブ版があり、公開期間は2021年9月26日~12月31日)


埼玉県芸術文化振興財団
彩の国さいたま芸術劇場 日英国際共同制作
The Home オンライン版《バーチャル施設見学》
https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/92235/

(3)村上さんの発表


ご自身がホスピタルアート(デザイン)に関わられた介護医療院 長岡保養園「すまいる」の事例を発表くださりました。築30年ほどの施設が介護医療院になるときに、インテリア全体を刷新する際にアート導入したそうです。周辺の木々や風景といった自然とリンクするようにゾーンの名前と色を計画し、全体のものがたりとそれぞれのアート箇所のものがたりをつくり、介護者、看護者と患者のコミュケーションツールとなることを目指しました。また、患者、家族、スタッフの参加によってアートが完成するように進行したとのことで、医師、職員への説明会の実施もおこなったそうです。


村上さんより紹介文
介護医療院のネーミング、マーク作成のプランから、さらに芸術(アート)のもっている癒しのチカラを院内に取り入れ、医療現場において、患者、家族とともに関わる医療スタッフ、職員が、人間の尊厳へどのように向き合い、気持ちを温め、毎日を過ごしていける現場をつくっていくかを考え、進めてきた。

参加によってアートをつくった。スタッフが患者さんの手を取って一緒に描く場面も(画像=発表者資料より転載)


(4)佐々木さんの発表


看護師の勤務をへて大学教員として高齢者看護に関わり、とくに認知症ケアに関心の高い佐々木さんからは、認知症高齢者のケアの体験を発表くださいました。その内容を「回想法のようなもの」と表現されました。

高齢者の心に寄り添い、生活史に着目し、その方の思いを知るために、思いを想起させるような物や絵を見せる、体験してもらうなどの方法をとられたそうです。結果、昔の記憶を呼び覚ましたり、落ち着きを取り戻したりするような結果があり、具体的に表情や言葉に変化があったそうです。「わかったつもり」にならないことが本当の意味での寄りそうことになるのではないか、とお話されました。


(5)松村さんの発表


医療福祉機器メーカーにお勤めの松村さんからは、会社としてアート導入に携わった特別養護老人ホーム「シンフォニー」(群馬県高崎市)の事例を教えていただきました。2021年6月に開設されたばかりの施設です。


松村さんより紹介
慣れ親しんだアイテム(高崎のダルマ・手ぬぐい・鍋敷き他)を展示することによりご利用者様の認知機能の向上・スタッフのモチベーションが上がることにより質の良い介護の提供。スタッフの離職率の低下。震災を想定したしつらえの工夫

だるまなどの民芸品が飾られた(画像=発表者資料より転載)


鍋敷きがアートに!(画像=発表者資料より転載)


3.受講生の感想


  • 実際の実施の内容を拝見することで、高齢者施設へのアートのイメージがとても広がりました。こうでなくてはいけない・・というような固定観念がなくなり、より高齢者に寄り添う形を求めていきたくなりました。
  • 大切なことは、多職種・ご家族など巻き込んでいくことだと思いました。
  • ホスピタルアートと聞いた時に、誰を対象としているのか、どのような効果があり得るのか、ということを具体的に考えていくことが重要だと思いました。患者さん、ご家族、医療スタッフ、地域住民など、対象に合わせて、誰が何をどのようにコミュニケーションしていくのかということをしっかり考えていく必要があると思いました。
  • 学生さんが高齢者の方のそばに座りじっくりと対話する様子が目に浮かび、丁寧に一人ひとりに向き合うことの大切さをあらためて感じました。学生さんらが実際に介護職や看護職に就いた時、業務に忙殺されることがあっても、一人ひとりを想うことを忘れないでいて欲しいと切に思いました。

参加者、発表者、相互が刺激のある発表をもらえました。ありがとうございます。
次回も事例発表が続きます。


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