NEWS 事務局からのお知らせ

英国レポートの輪読ゼミ 第3回(9/28)【後半】第5章の発表とディスカッション

5章 場所・環境・コミュニティ(Place, Environment, Community)


「イギリスのヘルスケアアートの英語の報告書をみんなで読もう」
第3回輪読ゼミ 2021年9月28日(火)19~21時 オンライン開催


4章7節と5章の発表とディスカッション
・阿部先生からのお話
・発表1:第4章7,7-1/永山さん
・発表2:第4章7-2,7-3,7-4/吉見さん
・4章7節のディスカッション
※以上は前半の記事でご紹介しています。
・発表3:第5章5,5-1/山本さん
・発表4:第5章5-2,5-3/古川さん
・発表5:第5章5-4,5-5/猪村さん
・発表6:第5章5-6,5-7,5-8,5-9/Sさん
・5章のディスカッション
・事務局からの連絡(次回担当割の確認)


輪読ゼミ第3回では、第4章7節の発表とディスカッションに続いて、第5章の発表とディスカッションをしました。この記事では、後半の「第5章の発表とディスカッション」について報告いたします。
前半の記事は、下記からお読みいただけます。
英国レポートの輪読ゼミ 第3回(9/28)前半、第4章7節の発表とディスカッション

発表3:5-1 自然と建築的な環境/山本さん


「5章 場所、環境、コミュニティ」を山本さん、古川さん、猪村さん、Sさんの4人の方にご発表いただきました。

山本さん「建築の設計をしてます。私にとってこの5章、特に1節は本当に身近なテーマだったものですから担当いたしました。脚注も拾い、引用元の内容まで少し調べながら楽しくアプローチできました。
レポートの巻頭の方に各章の要約があり、スライドのように5章全体を把握してみました。」



「要約をふまえて、内容に入りたいと思います。
5章の出だしはナイチンゲールでした。冒頭には彼女の文章が引用されていて、美しいもの、多様なもの、色鮮やかなものの効果は、当時評価されていなかったが、心の問題精という当時の通念に対して、ナイチンゲールは身体的にも影響が必ずあるんだという信念を持っていたことが分かります。
彼女の著書『Note on Hospitals』には、回復を高めるものとして、窓の外を見ること、そして自然を楽しむこと、そして、頭の側からの光のもとで読むことが心身に作用すると書かれています。私にとっては学生時代からずっとバイブルで、今でも医療を設計するときのデザインのもとになっています。」


「自然の中に身を置くだけで、心身がリフレッシュされてポジティブな気分になるのは誰でも経験していることだと思うのですが、それに関連して『バイオフィリア』という言葉を紹介します。1984年にアメリカの生物学者エドワード.o.ウィルソンによって提唱された概念で、人間には潜在的に自然や他の生物との結びつきを求める、『自然とつながりたい』という本能的欲求がある、というものです。」



「それでは本題に戻ります。この章の導入では、場の概念を捉えようと、イギリスのウェールズ地方の文化と遺産をもたらす場の役割事例が紹介されています。
コミュニティにおける自分の居場所作りが、より豊かな生活や充実した人生の扉になるということを、下のスライドにある女性が本の中でのべています。
ほかにはゲニウス・ロキの場の概念を紹介しています。このゲニウス・ロキの概念のほかに、建築家はトポスという言葉もよく使います。場所に意味を持たせて、価値ある環境を作り出すときに使うのですが、この章ではとても大事なものになってくると思います。」



5-1 自然環境と建築環境(The Natural and Built Environments)
「この章の見解が前置きとして4つのセンテンスで紹介されていましたが、私はそれを3つA・B・Cに分類し、5-1をまとめるベースにしました。下のスライドが5-1全体をまとめたものになります。左に列記したのが本文中で紹介されている事象です。
緑色で書き足したのが、私がそこで注目したキーワードになります。自然環境オープンスペース、そして社会的処方などです。
政治的な絡みでBの項目では、公衆衛生への影響として、自然が大きな健康要因になっていること。これは健康増進だとか疾病予防につながる話です。イギリスの田園構想は昔から有名ですけれど、特色ある地域開発のひとつとして紹介されて、それを政府が支援する仕組みを何年か前に立ち上げたとありました。イギリスに多く残っている文化遺産の活用ですとか、あといろんな格差、生活・教育・健康面の格差という貧困の悪循環を断つことについても挙げられていたと思います。
そして、3つ目のコミュニティへの関心を探るのところでは、適切に設計・手入れされた公共空間こそが、コミュニティを一つにするんだと述べられていました。
さらには、良いデザインとは何か、現在も将来も機能する場所を作ること。魅力的であるとは、先ほどの場の概念ですけども、人にインスピレーションと特別な場所を与えるものでなくてはいけない、と。
その他、ライフタイム・ホームとライフタイム・ネイバーフッド、これは日本にもある包括的ケアの話とつながります。
最後に、プランニングは非常に意味があることなので、これを共同制作の中でちゃんと果たすべきだと述べてありました。」



「この章においては、コミュニティにおける自分の居場所作りが、『より豊かな生活や充実人生を送る』という意味で鍵になるのかなと思いました。

その後のスライドに、細かな内容を関連するURLも貼り付けておきましたので、またご覧いただければと思います。
中でもナショナルトラストのホームページには驚きました。もちろん自然環境と繋がる話なんですけども、ナショナルトラストはアートコレクションを持っていて、それと自然をうまく結びつけて、バーチャルで旅ができるようなコンテンツがあり、今のコロナ禍にはぴったりかなと思いました。」























発表4:第5章5-2,5-3/古川さん


続いて古川さんに5章の2と3節をご発表いただきました。

古川さん「イギリスに20年程住んでいて、現代美術と国際平和学を学び、現在はアート活動をしながら、紛争地域や文化外交に興味を持っています。
発表の前にイギリスの環境をまずお話したいと思います。イギリスは深く階級社会が根付いていますし、人種差別や移民、テロといった問題のほか、貧富の差が激しい社会です。そして気候的には冬がとても暗く、日が射す時間が短いためか、精神疾患を患っている方が多いように感じました。ロンドンでは暴動も起こりますし、日本に比べて犯罪率も高く、社会問題が多い環境といえるかもしれません。ヘルスケアの分野に力を入れているのも、そういう急を要する背景があるのかなと思いました。」

5-2 アートと文化遺産のための資金調達(Arts and Heritage Funding)
「スライドにはいります。
デジタル・文化・メディア・スポーツ省の報告書で、『最善にデザインされた病院は、患者の精神と健康の回復を手助けする』と発表された後に、ヘルスケア建築とデザインセンター(Centre for Healthcare Architecture and Design)が設立されました。設立したのは、国民健康サービス・エステート、医療と社会福祉のための環境を戦略的に開発するところで、NHSの中の部門になります。
時を同じくして、保健省が『健康のためのより良き建物Better Health Building』というイニシアチブを開始しました。
保健省が依頼してシェフィールド大学の建築学部に依頼して、医療施設の物理的環境が健康や心理的・社会的ウェルビーイングに貢献することを示す報告書がまとめられたということです。」




「『医療施設におけるアートは、不安を取り除き、 人間らしさを取り戻すことを可能する。』ということで、英国王立建築協会の元会長は『芸術や美しさがあり精神性を高める環境は、身体的、精神的な状態に関わらず、すべて回復への一部となり得る』と、また建築の専門家が『日光、庭園、天然素材の重要性』を訴えました。またアートの専門家は、『デザインは患者と病院の間のパイプ役となり、人々が呼吸し、 考えることができる空間や活動を提供することができる』と言われています。」


「私は建築という視点でヘルスケアアートを見たことがありませんでしたが、このスライドにあるようなおもしろい建築が、イギリスではこのセンターを軸に建てられているそうです。」



「そして、新しいヘルスケアビルを評価するためのツールの一つとして、英国研究機関環境評価法というものがあり、これは医療の専門家、芸術家、建築の専門家が集まってできた評価法だそうです。

具体的には、特定のプロジェクトにアートコーディネーターが任命されていること、または英国王立建築協会(RIBA)ステージBで、このステージBがどのくらいなのか分からないのですけども、開発のためのアートポリシーとアート戦略が作成され、 シニアマネジメントレベルで承認されていること。やっぱり建築段階だけではなくて、患者さんが回復していく中にもアーティストや建築家が入っていかれるということです。
目的としては、次の項目になります。ちなみにウェールズやスコットランドはもうアーティストや建築といった専門家が医療に関わることが定着しているので、この評価法はあまり適用されていないということです。」


英国研究機関環境評価法の基準のひとつに含まれる項目
○医療環境の向上
○地域社会との関係構築
○患者さんとそのご家族との関係向上
○患者さんやご家族の不安を和らげる
○生きた植物を取り入れることによる医療環境の緑化(必要に応じて)
○スタッフのための創造的な機会を生み出すトレーニング



5-3 権限移譲(Devolution)
「5-3は権限移譲についてです。
皆さんご存知の通り、イギリスは『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』ですけれど、1997年にスコットランドとウェールズが行政権をそれぞれスコットランド議会とウェールズ議会に移譲することに賛成して、翌年には長期にわたる権限移譲交渉の結果、北アイルランド議会が設立されました。北アイルランドはアイルランドと常に紛争関係にあったんですが、1999年に和平合意がされました。今でも紛争の名残がある状況ではありますが、こうして権限移譲がされて、ヘルスケア文化の予算もそれぞれの国が担当しているということです。

ペインティングス・イン・ホスピタルズという団体は、1959年にロンドンで設立され、現在はイングランド・ウェールズ・北アイルランドで、患者さんのストレスや不安を取り除くことを目的として活動し、4000以上のアートを保有されているそうです。患者さんからスタッフへの攻撃性が減少したことや、スタッフの採用と定着率が向上したことが明らかになったという報告がされています。」




「スコットランドは活発で、スライドにあるような活動が率先して取り入れられていて、国自体も『創造性は肉体的にも精神的にも、私たちの健康と福祉に非常に大きな貢献をしている。』と表明しています。
ウェールズは、他に比べるとあまり進んでいないのですが、ウェールズ議会でクロス・パーティ・グループという芸術と健康に関わるグループができました。
北アイルランドは、18人のアーティスト・イン・レジデンスを支援し、州内の5つの医療・社会福祉と社会福祉サービスにおいてアートを提供しています。
この紹介した3カ国では、アーティストが実際に病院に入り、活動をしているそうです。」





「ヘルスケア・イノベーション・エクスチェンジセンターは、ヘレン・ハムリン財団の助成を受けたロンドンのコンソーシアムで、アーティスト自身がやっぱり病院で活動しているというものになります。」




「最後に、次の問いかけをして終わりたいと思います。
 ○日本において、どのように日本のヘルスケア・アートを促進できるのでしょうか?
 ○私たち民間が地域の病院、または地域社会にどのように貢献できるか?」


発表5:第5章5-4,5-5/猪村さん


続いては猪村さんに5章の4と5節をご発表いただきました。

5-4 場所に基づいた業務委託(Place-Based Commissioning)
猪村「私は普段大学で看護の勉強をする傍ら、闘病中の子どもたちへのクリエイティブな支援を目標に、探究学習の提供をしている団体を運営しています。
今回私が担当した『場所に基づいた業務委託』のパートでは、健康の広範な決定要因とサービス需要との関係、つまり地域とか場所と健康を決める要因は絶対結びついているということを、伝えたいんだと感じました。
2014年、2016年、2017年とさまざまな例が紹介されていましたが、『サービスを運営する場所に定着させて、人々への対応力、関連性、影響力を構築する』ことだとか、『医療制度の将来的な持続可能性のための最良の希望である』のが、やっぱり地方自治体に焦点を当てることだとか、地域住民の健康と福祉をかんがえるとき、医療と地域は切り離せないということを言っていると感じました。」



「そういった風潮が強くなるにつれ、白書や宣言文でもっと地域と医療を結びつけていかないといけないとか、場所はつながりを取り戻す手段を提供するものだから重要であるとか、遺産とか芸術とか文化、環境という場所に根ざした特定の要素は、オプションではなくて、課題の本質というか、そこに対してアプローチをしていくことこそが、健康に繋がるという文脈でまとまっていたように思います。

健康の根本原因に対処するということは、地域すなわちコミュニティ全体でアプローチしなければいけない。そういう文脈から社会的処方という話題に移っていきたいと思います。」




5-5 処方箋における芸術(Arts on Prescription)
「この社会的処方から始まって、『5-5処方箋における芸術』に話が発展していきます。社会的処方は最近日本でも話題になってきているので聞き馴染みのある方も多いと思いますが、イギリスの場合だとそもそもGeneral Practitioner(ジェネラル・プラクティショナー)というかかりつけ医がいるからこそ、患者をリンクワーカーに紹介して、社会的なつながりや人脈といった情報を提供していくことができるので、日本の一般的な医学的手法とは異なるものとなります。
日本では最近こういった本が出版されたり、研究所が立ち上げられたので、興味のある方は見て頂ければと思います。」



「社会的処方の目的は、臨床環境を越えて心理社会的問題の解決を求めることにより、不健康の広範な原因に対処すること、となります。
なかなか医学的に介入できないことに対しても繋がりとかコミュニティで社会的なアプローチをしていこうという制度の話で、最終的には自尊心と自信の向上、不安で抑うつの減少、心理的ウェルビーイングの改善という成果が実際に数値的に測ることができています。
あと、GPを受診する人の5人に1人は社会的な理由であるとか、社会的処方が実施されている地域ではGP訪問の減少が報告されているということで、おもしろいなと思いました。
GPは患者さん自身が人としてより良く生活していくために、医学的なことに限らないさまざまなアプローチを提供していく役割なのだということも学びとなりました。」
  



処方箋に基づいた芸術活動は、受動的ではなく能動的であり、紹介するGPと患者の関与が必要と書いたスライドに写りますが、社会的処方がすごく必要だと言われてきているにもかかわらず、なかなか正式な形としては普及していない、ということが書いてあったように思います。
実は2007年ぐらいから芸術の処方箋という話は出てきていつつも、なかなか表に出てくることは少なくて、実際にアートを提供しているけどそれは芸術的処方箋ではない、と。」



「それで今後のこととして、実際に芸術を処方したときに、うつのレベルが減少したりとか医学的にも根拠があるというところを押していって、アート・オン・プリスクリプションの活動の位置づけを明確にしなければいけないと。あとは社会的処方という関係性のもとに芸術活動を提供すると思うのですが、そこのニーズや評価などをまとめた大規模なデータセットを作成することがすごく重要で、これから必要になってくるということが書いてありました。
デンマークには100万ユーロの社会的処方の基金があるという、びっくりするような情報もありました。
実際にGPの受診率や入院率も減っていますし、まずはその社会的処方を確立した上でその上に芸術を合わせていく必要があるのかなと感じました。
私からの発表は以上です。」



発表6:第5章5-6,5-7,5-8,5-9/Sさん


5章の最後のパート、6.7.8.9節はSさんからご発表いただきました。

Sさん「先ほどの芸術の処方という話を受けて、報告書では次に、実際に文化施設ではどんな取り組みが行われているかという内容が説明されています。」

5-6 美術館、図書館と健康(Museums, Libraries and Health)
「この節は、文化施設、ミュージアムで行われている事例が主になっていました。 ネットで事例を調べると動画なども出てきて、そのURLを発表資料に入れておきましたので、興味のある方は後で見ていただけるといいかなと思います。

まず、芸術には健康やウェルビーイングに及ぼす効果があるということで、イギリスの美術館・博物館には600程のプログラムがあるそうです。多くは高齢者、特に認知症の方を対象にしていますが、メンタルヘルスや公衆衛生教育関係のものも多いです。
ただ、やはり財政的に厳しい現状もあると書いてありました。
スライドで事例の3つ目にあげている『Creative Heritage in Mind』は、メンタルヘルスの患者の方がミュージアムコレクションに触れて、そこからインスパイアされて作品を作り、展覧会で発表したり、冊子や動画の形にしたりして、達成感や自信を得るという取り組みです。」



「以前第2章の内容で、文化施設に行く人は経済的に豊かで教育水準が高く、中高年の限られた人であるという話があったかと思いますが、それがここでも述べられています。普段は文化施設に行かない方々に参加してもらうときには、普段から通っている人たちと比べて芸術に対する反応が違うので、来館者の特性に合わせてプログラムをつくる必要があります。

図書館についても触れられていて、本を収蔵するだけではなく人々の幸福で健康的な活動に資する役割があるということですが、イギリスでも日本でも司書が減らされているとありました。事例もひとつ紹介されていました。」




5-7 高齢者にやさしい都市とコミュニティ(Age-Friendly Cities and Communities)
「高齢者に優しい都市とコミュニティという考え方が2006年にWHOから出ているらしく、イギリスでもいくつかの都市が参加しているそうです。
紹介されていたマンチェスターの事例、『Age-Friendly Manchester』は2007年から行われていて、高齢者の方がアンバサダーとなって地域の文化イベントへの参加を呼びかけるなどしているようです。
『高齢者に優しい病院』という言葉も出てきていて、高齢者の方にフォーカスする取り組みが増えているということでした。」



5-8 認知症の人に優しいコミュニティ(Dementia-Friendly Communities)
認知症の人に優しいコミュニティというものもあり、『認知症の人が理解され、尊重され、支援され、コミュニティの生活に貢献できると自信が持てる地域である』ことを目指して、さまざまな取り組みがあります。
認知症患者さんだけではなく、その家族の方や介護する側にも、芸術に触れていただくような取り組みが多くあるようです。
事例の中で、 特に面白いと思ったのがスライドで2つ目にあげている『House of Memories』というリバプールのものです。家族など介護者向けのトレーニングプログラムで、俳優の演技から認知症を理解したり、博物館に所蔵されている昔の生活用品や当時流行したものを前に高齢者と話をすることで記憶を掘り起こすといった内容です。」



5-9 芸術と社会的弱者のコミュニティ(The Arts and Marginalised Communities)
「社会的弱者のコミュニティに向けた活動もいろいろあります。疎外される要因には年齢、障害、階級、人種や民族、教育状況などがあるのですが、BAMEと言われる黒人やアジア人、少数民族の方々はメンタルヘルスになる割合が高いそうです。また、路上生活者の方は平均寿命が47歳というのにはすごく驚きました。依存症にかかりやすい傾向もあるようです。
事例の1つ目、『The Homeless Library』はアーティストと路上生活者の方が協同して、路上生活者の方が人生を振り返ってアートや詩をつくったプログラムで、その作品は本になっています。電子書籍を無料でダウンロードできるので、もし興味があればご覧ください。」



「最後に、個人的に印象に残ったことをまとめました。
1つ目が、能動的に自分がボランティアをしたり、作品をつくって発表の機会を得たりすることで、自信につながって、その後の生活の改善に繋がっている例が多く紹介されていたこと。
2つ目が、介護者の方のサポートも重視していること。そこが崩れてしまうとすべてが崩れてしまうので、その方々を支えることも大切なのだとあらためて感じました。
3つ目が、フィクションの要素です。演劇や詩を用いることで現実に対処しようとするのは、効果があるように思いました。
一番下におまけとして紹介したのは、個人的に興味を持っている事例ですので、よければ見てみてください。
発表は以上です。」



   


5章のまとめとディスカッション


5章、4人の方の発表を終えて、阿部先生からまとめをいただきました。

阿部先生「最後のSさんのご発表をうかがうと、社会の中で居場所を得るために芸術が役に立ちそうだということが分かって、やっぱり場所なんですね。この5章はたしかに場所の話でした。
最初の山本さんのご発表で社会的処方という言葉が出てきて、次の古川さんからはイギリスの社会状況が日本に比べてハードであることを教えていただき、その上で猪村さんからコミュニティ全体からのアプローチが大事で、特にGP、ジェネラル・プラクティショナーという存在にフォーカスしてくれました。最後のSさんからは、社会的弱者の方には配慮が必要であるとか、彼らにとっての居場所づくりというかコミュニティ参加に芸術が役に立つ、という話をうかがったように思います。
皆さま、ご発表ありがとうございました。」

その後、お一人ずつ感想などをご発言いただきました。
複数の方から、古川さんがお話しくださった英国の社会背景が印象的だったとの話があり、改めてレポートの内容や事例を学ぶだけでなく、ベースとなる社会状況の違いも意識する必要性を感じました。
また、社会的処方を日本で取り組むにはどこが管轄となるのかとか、持続的にヘルスケアアートに取り組むためには今ある日本のシステムにうまく組み込んでいく必要があるのではなど、得られた知見を日本に置き換えるといった積極的な姿勢が皆さんの発言から感じられました。前の方の話題から関連情報の提供がある場面もあり、充実した時間となりました。

最後に、事務局から次回の担当割の確認などをし、課題シートへの記入をお願いして終了しました。


SUGGEST 関連ページ