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英国レポートの輪読ゼミ 第3回(9/28)【前半】第4章7節の発表とディスカッション

輪読ゼミ第3回の報告【前半】4章7節の発表とディスカッション


「イギリスのヘルスケアアートの英語の報告書をみんなで読もう」
第3回輪読ゼミ 2021年9月28日(火)19~21時 オンライン開催


4章7節と5章の発表とディスカッション
・阿部先生からのお話
・発表1:第4章7,7-1/永山さん
・発表2:第4章7-2,7-3,7-4/吉見さん
・4章7節のディスカッション

※以下は後半の記事でご紹介します。
・発表3:第5章5,5-1/山本さん
・発表4:第5章5-2,5-3/古川さん
・発表5:第5章5-4,5-5/猪村さん
・発表6:第5章5-6,5-7,5-8,5-9/Sさん
・5章のディスカッション
・事務局からの連絡(次回担当割の確認)

英国レポートの輪読ゼミ 第3回(9/28)【後半】第5章の発表とディスカッション
https://healthcare-art.net/news/event/entry-226.html

阿部先生からのお話

はじめに講師の阿部先生から次のようなお話がありました。
「さまざまなご都合でご発表ができな場合もありますよね。そうした場合はご無理なさらず、次回に持ち越してご発表をいただければと思います。
ご発表内容は、ご自身が大事だと思うポイントに絞ってお話いただいて、皆さんと思ったことを共有することに、それぞれのできることにチャレンジすることに重きを置きたいと思います。最後の回には英国のAlexandra Coulterさんとオンラインでお会いできますので、それまでに何か聞きたいことをいくつか整理するかたちで、気軽に取り組んでいきましょう」

・発表1:第4章7,7-1/永山さん


前回4章6節までを発表いただきましたので、今回はその続きの4章7節を永山さんから動機も含めてご発表いただきました。

4-7資金調達の状況(The Funding Landscape)
永山さん「はじめまして、永山です。現在、アールブリュット、障がい者アートを外に広げるビジネスをしています。
今回、この7節『資金調達の状況』を選んだのは、日本におけるアート導入の資金調達の難しさを強く感じているからです。それで海外の調達方法や課題を知りたいということと、エビデンスがあれば資金調達ができるのかどうかも疑問だったので選びました。」



「では、内容に入りたいと思います。まず2008年金融危機以降ソーシャルケアの資金不足が、10年後ぐらいまで続くと言われております。もう10年経っているので、今はどうなのかが私としては、すごく疑問でした。
また、それをやっていくためには新鮮な思考等の新しいアプローチを必要としているとも書いてあったのですが、この部分がどこにも具体的に書かれておらずすごく疑問だったので、そういったことも調べていきたいと思いました。」
4.7.1健康と社会福祉のための資金調達(Health and Social Care Funding)
「このレポートでは、芸術に次のような良いことがあると書いてあるんですよね。しかしながらこの目的で芸術に公的資金が流れることはないという、矛盾したことが書いてあると感じました。」


芸術により
・予防の強化!
・薬などの需要を減らす!
・入院期間の短縮!→仕事の欠勤が減る
・介護の必要性を遅らせる!
⇒健康と社会的なケアの費用も節約できる



「次に、どのように資金調達がされているかを、今回の章でちょっと探してみました。まずは2016年小規模の社会的企業、NPO法人とかだと思うんですけど、社会的企業やコミュニティグループを対象とした支援は、健康と福祉の増進に大きな役割を果たすかもできる、ということで、ここのボランティアコミュニティに対して少額の助成金の権限が与えられると書いてありました。すごくいいなと思いますが、少額とはいくらなのかという疑問もわきました。
慈善基金を含むもので資金が支えられているとあったのですが、日本ではやはり慈善活動が進んでいないので、なかなか当てはまらないんじゃないかという気もしました。そして医療機関の収入で運営されている場合もある、と。ただこうしたものは社内プログラムがしっかりしている必要があるんだろうなと感じました。」




「次に、資金調達の課題について。最大の課題は持続可能性であると述べられていました。ただ、入院期間がどれくらい減ったのかとかそういったエビデンスを早く出さなければ、やはり資金が出てこない。短期的に成果を出していくって、すごく難しいことじゃないかなと思いました。やはり予算の不安定さがあると。
あとこれは私自身もすごく感じているんですが、資金援助を受けようとする芸術団体にとって、コンプライアンスや契約などをやろうとすると、すごく大変なところがあると書いてありました。
次のスライドに行きます。しかし財政減の中でもいろいろなプログラムが行われているということも知りました。例えば『統合パーソナルコミッショニング』、IPCというプログラムが開設されたんですが、ただその全体ビジョンに芸術が含まれる兆候は少ないようです。あとケアホームの分野でもアーティストが個々に交渉していて、必要性は認識しているが資金提供が難しいということが書かれていました。」




「資金調達のプラスの報告もいっぱいありました。こういった契約の仲介するところもしっかりとできて、契約を獲得するためのツールがあるということも学びました。時間の関係で次のスライド1枚は飛ばします。」




「レポートのスライドとしては最後になります。この『資金調達のカギ 』が私が今回いちばん知りたかったことです。やはりエビデンスと優れた実践例を共有し、資金調達のための入札のスキルを高めていく必要があるということを、この章ではすごく学びました。

そして、レポートを読んで私自身が感じたこととしては、『積水成淵』という言葉になるのかな、どんな小さなことでも積み重ねで、資金調達のためにも努力が必要だなと感じました。私の発表は以上です。」




発表2:第4章7-2,7-3,7-4/吉見さん


続いて吉見さんに同じ4章7節の残りを最後までご発表いただきました。

吉見さん「こんばんは。私は日本ファンドレイジング協会という非営利活動の資金調達を専門でサポートさせていただく団体で働いています。先ほど4-7の1まで発表いただいて、今回私が担当したのが2,3,4になります。
ヘルスケアアートの領域に対して、どこからどういうお金を調達してくるのかという話の中で、大きく公的資金からと民間セクターからの調達の可能性がありうると話がされています。先ほどお話いただいたのは短期であったり不安定な予算である公的な資金の話ですね。私が担当する2までが公的資金の話で、中でも医療の領域ではなく芸術の領域からの資金の調達に関する内容になってます。3が民間セクターから様々な形でヘルスケアアートの領域に資金が入ってきてるという話の流れになっています。」

4-7-2 アートと文化遺産のための資金調達(Arts and Heritage Funding)
「内容を見ていくと、まず公的な資金の中でも芸術の領域の予算を取ってくることに関する技術になります。ACE、アーツカウンシルイングランドという宝くじを原資としてイングランドの芸術分野の振興を目的とした政府が出資している外郭団体みたいなものがあり、その政府系の組織でも芸術が私たちの健康と福祉にきわめて重要な貢献をするという認識を戦略フレームワークで持っています。
具体的にACEの支援を受けてイギリスのある地域で行われたアートプロジェクトでは、16%のウェルビーイングの増加が報告されています。ただ一方で資金は限られており、地方自治体による資金の提供に代わるものではなく、そのように設計されていないというような指摘もされていました。
ただ、芸術が役に立つことを示し、芸術の貢献度がもっと認められるようになると既存の公的資金によるプログラムからも芸術がより多くを得ることができるようになるだろうという記載もありました。」




4-7-3 慈善活動のための資金調達(Charitable Funding)
「これまでが公的な資金の話で、次に民間の資金からアートやヘルスケアの領域にお金を持ってこられるかという話になります。
まず、将来的には医療福祉分野のアートは、慈善活動や民間セクターからの資金調達の割合が増え、複合的な経済活動を行う必要があります、という話があります。
もう既に多様な資金がこの領域に入ってきています。個人の寄付や財団・信託からの助成であったり、ローンファイナンスという社会的投資のかたちで入ってきているもあります。

一方でこの領域に対して民間で資金提供している中で、健康に役立つ可能性があるという理由で明確に芸術活動を支援しているところほとんどないと書かれています。先ほどの永山さんの発表にもそういう内容があったかと思います。
ただここで面白いなと思ったのですけども、財団のお金に関してはエビデンスの必要性や助成金の目的について非常に異なる見解が示されていたという、ちょっと後でもあの少し説明しますけれど、そういう記述もありました。」


「慈善団体の資金提供者は予防戦略の投資においてリーダー的な役割を果たす可能性があります。それは公共部門の委託に対しても重要な影響を与える可能性があると書かれています。新しいアプローチ、新鮮な政策、そういったことが民間の側から起こる可能性があるという話ですね。
とはいえ、300の財団がボランタリー・セクターに対して日本円で約4050億円の資金を持っているのですが、その大部分が教育に使われ、次いで健康、芸術の分野に使われています、と。
ただ一方で、ボランタリー・セクターに流れ込んでいる公的な資金はもうケタが違っていて2兆円超えているという状況があります。NHSの予算中16兆円を超えているぐらいの規模の違いがあると。慈善団体が公的資金の代わりになることには抵抗があるのは理解できる、という事実があります。

そして、後で皆さんにスライドを見ていただきたいのですけど、エビデンスをどのように捉えるのかは財団によってすごく立場が異なっているようです。既に有用性については多くの証拠があるからとこだわらない財団もあるようです。」




4-7-4.  民間セクターの資金調達(Private-Sector Funding)
「この節では、ここ10年ぐらいで出てきた新しい、ソーシャルインパクト・ボンド(SIB)という手法の活用の可能性について言及されています。
行政の事業を民間の手法を用いて行うことによって、将来かかる行政コストを削減することができるかもしれません、と民間の投資家の資金を呼び込むんですね。世の中には社会的に何かよいことに投資をしたいと思っている投資家の方がいて、その資金を領域に呼び込みます。実際に投資家の資金によって事業を行って、それにより将来かかったであろう行政コストが削減されたということで投資家にお金を返還して、行政の側はコストが削減できるという、お互いがハッピーという仕組みがソーシャルインパクト・ボンドといいます。2010年にイギリスで始まり、世界的にも日本でも最近けっこう増えてきています。医療とか健康の領域で取り組みが多く、わりとヘルスケアの領域と親和性が高いといわれています。」



「いくつかSIBに関する参考資料のURLをあげておきましたので、ご興味のある方はまたご覧いただければと思います。

ただこのレポートでは、SIBは複雑なプロジェクトへの投資を誘致して、その効果をモニタリングすることが非常に難しいため、実行可能性は限定的であると結論づけられています。財政的な実行可能性を示すために手間がかかるので、小規模な団体よりも大規模なコンソーシアムに適しているかもしれない、と。この評価は確かにあの一般的にSIBで言われていることです。」




「最後のまとめです。
現状のアート活動の大部分は助成金でまかなわれていて、助成金の場合は短期的な資金で継続性に欠けるということ。これは非営利の活動の資金調達全般にいえることだという印象がありました。そこを、あらゆる活動が乗り越えていかなければいけないと。
あと資金の出し手によって目的や意図、評価はさまざまで、確かにそうだろうと思いました。先ほどエビデンスの話があって、公的な資金やSIBであればやはり重要なポイントになるんですけれども、ただ財団で、別の意図で助成をしている団体ももちろんあります。
SIBの可能性についてレポートではわりと限定的に捉えられているようですけれども、やろうと思えば使えるのではないかという感覚を持ちました。以上です。」



  
  


4章7節のディスカッション


4章7節、2人の方の発表を終えて、ディスカッションの時間を持ちました。

阿部先生「最初にお二人の発表を整理すると、まず最初に永山さんが資金調達の難しさと、調達するためにはどうしたらいいのかとの投げかけをいただき、続いて吉見さんから多様な資金で構成されており、中でも興味深かったのがSIBという手法で、医療やヘルスケアの分野と親和性が高いともお話いただきました。短い時間で発表いただきましたので、SIBに関して専門家である吉見さんからもう少しお話をうかがえますでしょうか。社会のためにいいことをしたいと思っている人たちからお金を集めて、結果、公的な資金でやるよりも民間の力でうまくやることで、みんなハッピーとなる手法ですよね。この善意の投資家からお金を集め管理するのはいったいどなたが担当するのでしょうか?」

吉見さん
「中間事業者、そういうコンソーシアムを組成することを専門にしている団体があります。なのでSIBは一つひとつがオーダーメイドになります。まず最初に行政があり、行政発でこうした課題を解決したいというところからスタートして、それを受けて中間事業者がスキームをつくり、資金調達や事業者、評価方法などの枠組みをつくります。このように音頭をとるコンダクターのような組織があります。」

阿部先生
「例えばアーティストの方やヘルスケアアートに関わる方が、SIBで予算がほしいというときはどこに相談するとよいのでしょうか?」

吉見さん
「SIBは行政発の取組みになるのでそこは難しいですね。これはレポートにも書かれていたのですが、SIBはNPO団体が自身の資金調達のために使う仕組みではないんです。」

山本さん
「イギリス発祥の公共事業を実施するための手法にPFI(Private-Finance-Initiative)というものがあり、PFIの場合は実施前に必ず実施可能性調査があるのですが、SIBではどうなのでしょうか?」

吉見さん
「基本的には同じですね。公的なものを民間事業者がやり、成果連動型にする、さらにそこに外部の資金投資家投資が入ってくるのがSIBの特徴的な部分ですね。」

鈴木先生
「投資家は何を見返りにするのでしょうか?」

吉見さん
「社会的に良いインパクトを生み出すということにモチベーションを持っている投資家がいらっしゃるんですね。とはいえ寄付ではないので、リターンは必要となります。投資なのでより厳格な事業評価が必要で、エビデンスは必須です。」

阿部先生「岩田さんはNPOの運営もされているので、いろいろと思うこともあるのではないですか?」

岩田さん「資金集めについては苦労しています。助成に頼ると継続性がないという話はその通りですし、最近はクラウドファンディング等にもチャレンジしています。
大学院生のころにイギリスのマギーズセンターについて調べていていたのですが、施設にファンドレイザーがしっかりといて、ゲーム的なものだとかTシャツを販売するだとか、何でも楽しみながらチャリティにしていたのが印象的でした。みんなからお金を集めてマギーズを守っていこうと、そういうお金のサイクルをしっかりと計画されていましたね。」

阿部先生「今のお話をうかがって思い出しました。以前リバプールのマギーズに行った際、ガンを患った友人の話をして号泣しながらも、私、お金を置いてきた気がします。自然とお金を落とすしくみがあったのでしょうね。
他にどなたかこれまでの感想あればぜひ」

三ツ川さん「ソーシャルインパクトという言葉がすごく響きました。お金を取りに行くことが出発になるよりも、本質的な課題解決に向かう手順をビジネスでまわす方が持続可能のように感じていて、とはいえ資金はネックになってくるので、やっぱり小さいところから始めるのでしょうか。それがうまくまわっていけば大きくしていくと。」

阿部先生「結局小さなことからコツコツと、ですね。きれいに最初の永山さんのご発表に戻りましたね。永山さん、吉見さん、ご発表ありがとうございました。」


※記事が長くなりますので、第5章の発表とディスカッションは別の記事でご報告いたします。


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