NEWS 事務局からのお知らせ

連続講座第8回 希望者による発表

2020年8月26日(水)18時半から、zoomにて、連続講座第8回を開催いたしました。「意見交換と希望者による発表」というタイトルで、当日の流れは以下のようでした。

第8回のプログラム

  1. 鈴木先生と事務局の挨拶
  2. 受講生9組による発表と、チャットによる質疑応答
  3. 10~15名程度のグループに分かれ、受講した感想とこれからの抱負を発表
  4. 鈴木先生からの総括

外部講師を招く講義ではありませんが、最大90名が同時接続してくださり、皆さんの関心の高さを感じることができました。早速、当日発表くださった方々の内容を簡単に紹介していきます。

受講生の発表

(1)王立マンチェスター病院Lime、ロンドンArt4Minds ワークショップ参加体験



関西大学の亀井教授より、英国におけるユニークな取り組みやワークショップの参加体験のお話。

アーティスト・イン・レジデンスの話には、「アーティストは病棟で暮らすのでしょうか? 滞在人数と滞在期間はどの程度でしょうか? このような試みはイギリスでは一般的なのでしょうか?」などの質問が寄せられ、「マンチェスター病院が先駆的だそうです。病院の近くで暮らし、マンチェスター病院の場合は、旧舎に作られたスタジオで制作やワークショップをします。2014年のマンチェスター眼科病院200周年の際に招かれたアーチストは1年間滞在したそうです」という返答がありました。今後は、英国だけでなくフランスにもリサーチをかけたいとのことです。

(2)耳原総合病院での事例の紹介



ホスピタルアーティストの馬場さんからは、耳原総合病院の手術室に向かう廊下でのアート制作について紹介がありました。

(3)京都芸術大学(旧:京都造形芸術大学)の産学連携における
ホスピタルアートプロジェクト「HAPii+」のこれまでの取り組みと展望



京都芸術大学のホスピタルアートプロジェクト「HAPii+(はぴい)」から、由井先生、学生の楠本さんと鈴木さん。「これからのホスピタルアートをつくるのは誰か?」という印象的なタイトルで、京都府立医科大学や京都大学医学部附属病院でのホスピタルアートの事例をスピーチいただきました。

意欲ある学生さんたちの熱意に、勇気づけられた受講生が多かったようです。「専攻を超えて様々なメンバーが集っているのですか? 授業の一環でしょうか?」との質問に、「多学科、多学年のプロジェクトで、授業です」という返答がありました。「施工を希望する病院はどのように探されるのですか? 大学側からですか?」には、「京都府立医大さんは、森口ゆたか先生が大学におられた頃のつながりから施工することになりました」との回答がありました。

(4)ひといろプロジェクト「ホスピタルアートinギャラリー」



ひといろプロジェクトの川西さんから、ギャラリーに病室を再現し、ホスピタルアートを紹介する展覧会の取り組みを紹介いただきました。企画展の空間構成のフローも紹介。大人の病室、子どもの病室について、壁面やカーテン、ワークショップなどの話がありました。

(5)名古屋第二赤十字病院の小児科改修における取り組み



パラマウントベッドの松村さんからは、名古屋第二赤十字病院の小児科改修における取り組みをお聞きしました。さるのモンパチくんが壁面イラストに登場していました。このストーリーは、当事業で発行しているブックレットvol.1でもご覧いただけます。

(6)植物造形・いけばなワークショップ
~重症心身障がい児(者)施設及び病院での30年の活動~



生け花の先生である柳沢さんから、重症心身障がい児(者)施設および病院での植物造形・いけばなワークショップについて。30年にわたる地道な活動から発せられる言葉を受け取ることができました。連続講座の受講が柳沢さんのお役に立てたようでよかったと感じています。受講生からも、「闘病し、普段とは異空間の場にいる人にとっては、とても心が癒され生きている心地がするような体験であると感じました」という感想が寄せられました。

(7)障害福祉の分野におけるアート作品の制作補助や展示協力



「何でも屋」と称した、まゆげたぬき商会の平野さんから、障害福祉の分野において取り組んできたアート作品の制作補助や展示協力について。その原点は名古屋大学医学部附属病院の小児科病棟でのペイント活動だったそうです。

(8)アート表現と美しいエイジング



美エイジング(R)協会理事の桜井さんから、アート表現と美しいエイジングについて。アートによるセルフケアの興味深い取り組みで、認知症でいらっしゃるお父様の描かれた絵の紹介がありました。受講生から、「お父さんによる塗り絵、その中にあらわれた表現のお話しは貴重なもので、人が制作するアート活動へのヒントも見出せると思った」という感想が寄せられました。

イベント案内があったので、掲載します。
塗り絵のワークショップ@千葉市美術館  zoom  9/26(土)13:00-
https://www.ccma-net.jp/learn/events/studio/touching-the-artists-world/

(9)「アート×対話」





エムオーエークリニックの院長、柴先生から。対話に着目し、オープンダイアローグの話へ。そして「まわり花」(輪り花?周り花?回り花?)の取り組みの紹介がありました。花を用いて対話力を鍛え、対話の質を変える試み。受講生からの反響が多くあり、このような感想をいただきました。

  • 「ダイアローグ」という単語が耳に残りました。対話をはかるためにコミュニケーション力を磨きたい!というものは自分の今後の抱負としてもあるのですが、これはもしかしたらダイアローグ力だったのかもしれないみたいなことも感じました。話を進める力盛り上がる力も必要ですが、相手の視点に立って考える、相手の言語を理解するなど、そういった面もとても必要だなと感じました。
  • 近すぎず遠すぎず、そっと寄り添う距離感が持てる事が素敵な事だと感じました。
  • オープンダイアローグという手法や、美術館での対話型鑑賞の取り組みは少し知っていたが、それを華道に結びつけた柴先生の取り組みは理念がスムーズに実現化されたものとして印象に残った。
  • アートによる直接的な効果にのみ注目していたが、触媒のように用いることもできるのだと気づけた。
  • 芝先生のお話から、対話がケアにおいて重要であることを改めて実感しました。対話がどのようなプロセスでケアや治癒をもたらすのかを、もう少し詳しく知りたいと思いました。
  • 冒頭の部分で日常にはアートがたくさんあるとおっしゃっていましたことが特に印象に残っています。それはちょっとしたお庭であったり家具であったりと確かに意識しなくても居住空間には個人のこだわりやデザインが現れてくるものだと思いました。あとはコミュニケーションとオープンダイアローグのお話など。そんなふうにアートを捉えることもできるのかと、うんうんとうなずきながら聞いていました。

受講生からの感想

  • 講師の方だけでなく、いろんな方がホスピタルアートで活躍されていることがわかった。特に学生の発表が印象に残っている。
  • ヘルスケア・アートは可能性ではなく現に役割を果たしている。
  • コロナ禍において活動自粛を余儀なくされているが、「デザインワークはどんな形でも、いつまででも続けられる」と考える余裕ができた。
  • 鈴木先生のお言葉にあったように、アートが風のように自然に病院の中に存在してほしい。
  • コミュニケーション、ダイアローグといった視点は、とても興味深いキーワード。今後も念頭におきたい。
  • 「スタッフが働きたくなる職場」であるというポイントもホスピタルアートの重要なポイントである。
  • 花を使った活動をされている人がたまたま複数いて、花を使ったアートも一つの方法であることがわかった。
  • 受講生の皆さんが花やコミュニケーション、アート作品などホスピタルアートをそれぞれの解釈で仕事や活動として取り入れていることがわかった。
  • アートとかデザインとか、言葉が持つ雰囲気よりも「対話」「ストーリー」が大切だと再確認し、私の立ち位置から見えるものを、1つずつ繋いでいこうと思う。

2020年度連続講座は終了しました

第8回で今年度の連続講座は終了しました。
キックオフから、長期にわたりご参加いただいた皆様、登壇くださった講師の皆様、ありがとうございました。オンラインになったことで、直接交流ができない難しさはありましたが、これまで遠方のために参加できなかった方に申し込みいただくことができ、受講生の数も増え、結果的に大成功だったのではないかと思います。

今後もFacebookページやグループでの情報発信や交流、また冬にもイベントを予定しています。準備ができましたらHPやSNSでご案内します。今後ともよろしくお願いいたします。


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