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連続講座第3回「みんなで描く病院とアートの未来」


2020年7月22日(水)18時半から、zoomにて、連続講座第3回「みんなで描く病院とアートの未来」を開催いたしました。

講師はNPO法人チア・アートの理事長、岩田祐佳梨さんです。筑波大学附属病院等でアートを取り入れてきた詳しいお話、具体的な事例やアートに対する考え方の紹介、またNPOとして目指していきたいことなどを教えていただきました。100名以上の方が参加しました。

講義の様子

岩田さんは講義のスライド撮影をお許しくださったので、講義録の前に先行してここでお見せします。手元でキャプチャした画像です。くわしい内容は、後日公開します講義録をお待ちください。

また、本記事の末尾に、講義に関連するサイトのURLをリンクしています。現在展開されているツールやプロジェクトの情報もありますので、もっとくわしく知りたい方、参加したい方などご活用ください!


当日の流れ


岩田さんのプロフィール。2011年から筑波メディカルセンター病院でアートデザインコーディネーターという職種で活動されています。NPO法人の設立は、この分野をもっと普及したいという思いで行ったそうです


チア・アートさんは、ヘルスケア施設で過ごす患者やご家族を支援するツールの研究開発にも取り組んでいて、画像はちょうど7月にリリースされたもの。医療関係者であれば無料で申し込みできるそうです(末尾にリンクあり)


「アスパラガス」という学生グループ。お医者さんの白衣のような白いつなぎにあえてカラフルな色彩を施して活動しているそうです


一例として挙げられたアスパラガスの参加型の取り組み。「物置状態だった場所だけど、じつはガラス張りで緑が見えてとてもいい環境だった」とのこと。カラフルなのはフェルトで、参加した人がはさみで切ってできたものをガラスに貼っています


こちらは別の取り組み。まだ病院がアートに抵抗感をもっていたころ、病院の環境にどうやったら浮遊感を出せるかと取り組んだものだそうです。患者さんからの投書が多く大好評、ストレッチャーで運ばれる患者さんの表情が明らかに変化することに看護師さんらも気づき、病院側の意識も変わっていったというリアルなお話でした


滑り止めマットを敷くのは大事なことですが、「おいしそうに見えないのを彩豊かにできないか」と改善した取り組み。ビタミンカラーのシリコンマットを、学生と教員で考えたそう


段階を追って説明してくださいました。職員、学生、デザイナーなどのコラボレーションが活発になるにつれて患者さんのためにという思いだけでは難しくなったとのこと。そこで共同を促進させる、専門でつなぐ人を、ということで、2011年から岩田さんがその役割を担うことになったそうです


岩田さんが取り組んだのは、プロセスを開くこと、参加型で行うことでした。「妄想ワークショップ」という取り組みを詳しく教えてくださいました。「来るだけでお茶が飲める」みたいな職員の方に参加してもらいやすい工夫が重要だとか


環境をつくるとはどういうことか? 病院を建てるときには理念を顕在化するようなインフラストラクチャーとしてのアートが求められるけれど、建物ができたあとには使いこなす、新たな要望に対応するなどの既存の環境を見直す必要があるということ


最後はアートコーディネーターの役割について。外部から資金を調達するお話もありました。最後のまとめでは、岩田さんが感じている「病院でアートやデザインをやっていく意義」を三つ大きく挙げてくださっています


コロナ禍でできることとして、現在展開しているアートプロジェクトの紹介がありました。現在進行形の取り組みを教えていただけるのも、住みこなすアート・環境改善に取り組まれているチア・アートさんならではですね!(末尾にリンクあり)


最後は人気のコーナー(!?)、講師と鈴木教授の対談でした


病院で長年経験されてきた岩田さんだからこその視点で、取り組みを分かりやすくまとめていただき、ありがとうございました。今回も受講生からの感想を一部掲載させていただきます。

受講生からの感想

アートコーディネータ―について、その取り組みや、岩田さんの考え方について

  • チア・アートで励まされるのは、患者・家族だけではなく、医療従事者も対象だということ。
  • タイトルを見るだけだと よくあるワークショップなんだろうと思っていた。しかし講義では医療と生活をつなぐというコンセプトのもとたくさんのインタビューと関わりを持つ人の多さにびっくりした。
  • 積極的に医療スタッフ、患者との関係だけでなく家族、学生など周りの人たちを巻き込んでチア!アートの方々が実施されてきたことは、これから日本の現場が目指していきたい1つの指標のように感じた。
  • どこの講義の回においても出てくる医療者と作り手の翻訳者「インタープリター」。そしてアートコーディネーターの役割とその需要性。
  • アートコーディネーターはつなぐ役目、コミュニケーション力がとても大切。『くまの目新聞』『つつまれサロン』『トリトリトリ展』などネーミングもおもしろい。やわらかさ温かさを感じた。
  • 自ら外部資金の調達に積極的に動いていらっしゃるということがわかった。
  • 資金について。実現には欠かせない問題になるので、生々しい話だがとても参考になった。
  • 10年かけてやってこられたと聞いて、やっぱり時間がかかるんだなと感じた。

病院でアートの土壌を作ること、そのプロセス

  • いろんな部署や職員と関わることで文化を育てていく。どんなに小さくても継続的に文化を育てていくことで、建て替えのときにもその文化がいきてくる。
  • 小さな改修や展示などを通してアートの土壌を作ることで、大きな改修時にアートを組み込むことがスムーズにできるということが印象的だった。
  • 病院の職員は多忙で、アートプロジェクトに対してはじめは無関心だというのは理解できた。それが、丹念な聞き取りや参加型のWSなどを通して徐々に改善の意欲が上がってくるというお話は、とても興味深かった。
  • 妄想ワークショップで医療スタッフがとても生き生きとしてアートに参画していたことが印象的。医療現場ではワクワクするようなことがあまりないため、医療スタッフ自身のメンタルヘルスケアにも良いと感じた。
  • やったらやりっぱなしのところがあるので、しっかり病院の方々や患者さん、そのご家族の意見や改修前後でどう変わったかを調べることが次のプロジェクトに繋がるのだと思った。

住みこなすアートへの共感、地域へも広げられる視野への共感

  • 巨大な構造物としてのアートが、本当に患者の癒しにつながるのか疑問もあったので、今日紹介されたような院内のそこかしこにさりげなく散りばめられたアートには、とても共感する。
  • アートが人をつなぎ、地域をつなぎ、豊かさを紡ぐということが実感できる実践。無駄な空間を活かして、生きた空間にする取組は素晴らしい。
  • 病院をとりまくグループのなかに神社がでてきて感心。職場の病院のある市にはわりと有名な神社があり、院内アートのモチーフにもなっている。
  • 岩田さんの講義をお聞きして、教会を中心に作られたヨーロッパの街や、日本の門前町のように、宗教の代わりにアートを中心に据えた人間性を大事にした医療的空間を作り、かつ、地域との連続性を維持し、色々なつぶやきも大事にし、まちづくりもおこなってしまう、そんな病院の姿が妄想された。さらに地域をこえてつなげていこうとする動きも今後楽しみ。
  • 『みんなで』の中には医療者・患者の他に、将来的には地域全体までも含んでいる。

講義関連のサイトURL

1)自己紹介、チア・アートの概要
チア・アート
ぷれパレット

2)医療と社会をつなぐアート・デザイン
・筑波大学芸術×筑波大学附属病院などでのアート・デザイン活動について
https://ocw.tsukuba.ac.jp/discovery/hospital_art/
http://www.tmch.or.jp/info/art/documents/2016-0816-1129.pdf

3)病院へのアート・デザインの導入プロセス
筑波メディカルセンター病院HP

5)まとめ
DOKI DOKI MOVIE PROJECT /オレンジキッズケアラボ×チア・アート★
第4回 チア!ゼミ「アートな医療的ケアの拠点とは?」


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