連続講座第1回「アートを取り入れた病院設計の現在と未来」
2020年7月8日(水)18時半から、zoomにて、連続講座第1回「アートを取り入れた病院設計の現在と未来」を開催いたしました。
(株)佐藤総合計画の永井豊彦さん(東京第3オフィス ディレクター)、川上浩史さん(同 チーフアーキテクト)、青山徹さん(同 チーフアーキテクト)、吉田一博さん(同 チーフアーキテクト)の4名を講師にオムニバス形式で進行することになりました。
※(株)佐藤総合計画の室殿さんにご発表いただく予定でしたが、都合により変更
講義のプログラム
① 社会的共通資本のシンボルとしてのホスピタルアート(永井さんより)
N市立病院、N県立病院、K医療センター、T市立病院
② ホスピタルアートに求められること(永井さんより)
病院満足度調査(厚労省調査)、病院機能評価など
③ こどもたちのための癒しの場づくり(川上さんより)
Y県立医療福祉センター、T県子ども支援センター
④ 高度急性期医療の場におけるアート(青山さんより)
K医療センター、Y大学病院A棟
⑤ グラフィックアートを活用した最新事例(吉田さんより)
Y市立病院
⑥ 今後の展望(吉田さんより)
公立美術館のアウトリーチ活動など
本日のポイント
(1)日本でのアートを取り入れた病院建築、その導入プロセスと実例、工夫
受講生の感想より
- 思っているよりも本格的にアートを取り入れている病院が多いことを知った。
- 実現に至るまで、何年も前から、緻密な計画のもとに実施されていることがわかった。
- アートへの予算が限られること、その中で公共性に配慮したり、病院としての機能を充分果たした上でアートを取り入れた設計にご苦労されつつも楽しみであることが分かった。
- 一つの病院の中に、様々なアーティストさんが入って作品づくりをしているのが印象的だった。
- 一定規模以上の病院設計を担当される設計者の皆さんが、アートに対してどのような姿勢で臨むのかでその後の展開に大きな違いが起こる現実を目の当たりにできた。
- アートやデザインは医療環境に不可欠。
(2)アートの科学的エビデンス検証の重要性、予算を得るための工夫やしくみづくり
受講生の感想より
- アートが医療や福祉の「基本価値」になるためには、エビデンスの提示が必要。
- 建築段階で予算として組み込むためのエビデンス、効果測定の難しさを知った。
- 1%フォーアートの件がとても印象的だった。
- 経営者のアートへの理解度が重要だと感じた。
- アートに割く費用が厳しくなっている今、グラフィックサインとして予算を取っておいた分をグラフィックアート作品に回すという方策もあるのだと納得。
(3)アートコーディネーターの役割、そしてトータルで継続的な連携が必要
受講生の感想より
- アートコーディネータの存在の重要性をヒシヒシと感じた。
- 運用を含めた仕組みづくりが必要。
- コスト感の話と、アートコーディネーターがいると助かるという話が印象的だった。
- 建屋設計、施主、作家の3者をうまくまとめていくには、コーディネーターが重要な媒体であり、患者の思いや、スタッフの思いをうまく把握するエンパシーを働かせることが改めて大切だと感じた。
- 英米の様に、医学や臨床心理学的なエビデンスを検証してくれる、病院運営者と大学研究者、アートコーディネーター、設計者との継続的な連携が必要であり、その背景があってこそ、コーディネートがビジネスとして成り立つ。
- 病院や施設との対話がどれだけできたかが、アート導入のコンセプト構築の完成度につながっていると感じた。作家さんと繋ぐ役割として、ぜひアートコーディネーター活用を。
(4)そのほか
受講生の感想より
- 患者さん中心で考えていたが、医療者、スタッフにとっての環境向上もホスピタルアートに求められることだということを学んだ。
- ルールがなくてもアートを優先的に導入してくれる施設が自然に増えることを願う。患者に寄り添った「患者ファースト」の環境づくりが理想。
- 理解が広まっていないなかでのルール化は、本質を低下させる危険があるかもしれない。ヘルスケアアートをよく理解した人材養成、つまり教育が重要。
対談の様子
講義、質疑応答、グループワークのあと、鈴木教授と講師の皆さんとで対談をしました。講義のあとにはアンケートを取っておりますが、この対談の時間をとても楽しみにされている方も多く、今後の回でも続けていきたく思います。
ご参加いただいた受講生の皆様、貴重なお話をくださった佐藤総合計画の講師の皆様、ありがとうございました。第2回以降の講座もご期待ください。(寺井)